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Tuesday, September 17, 2019

伊賀の特別天然記念物 オオサンショウウオ通信   2009年 冬・創刊号  通巻第1巻第1号


伊賀の特別天然記念物

オオサンショウウオ通信

2009年 冬・創刊号 通巻第1巻第1号




通信の内容


 1 はじめに


 2 メーリングリストを開設


 3 川上ダム建設の状況報告


 4 国土交通大臣業ほかへ要望書提出


 5 事業仕分人まさのあつこさんの活躍


 6 未来遺産プロジェクトに応募


 7 COP10事務局へ出展問い合わせ


 8 産経新聞連載「Be」


 9 田口勇輝さんとのやりとり 10活動予定について


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【発行】     


  伊賀の特別天然記念物   

  オオサンショウウオを守る会

    事務局  

1 .はじめに


会員の皆さまにはお元気で御活躍のこととお慶び申し上げます。


 平素は会の活動、運営にご理解、ご支援を賜り厚く御礼申し上げます。 


さる5月30日「伊賀の宝物 特別天然記念物オオサンショウウオを永遠に」という願いを込めて「Foreverオオサンショウウオシンポジウムin伊賀・青山」を開催しましたところ、全国から120名もの方々が参加され、市民の地球環境・生態系保全・生物多様性保全、そしてダム問題に対する関心の高まりを感じました。


その後、この取り組みが単なる打上げ花火に終わってはならないと、シンポ実行委員は運動継続の母体となる「オオサンショウウオを守る会」を結成しよう取り組みました。


 会を8月11日に(仮)立ち上げし、10月12日に結成総会を開催しました。


 その後、前原国土交通大臣、川端文部科学大臣、小川環境大臣、玉井文化庁長官に川上ダム建設地のオオサンショウウオ保護と川上ダム中止の要望書(後掲)を提出しました。会員は現在も増加し続けていますが、12月11日時点の会員数(正会員+賛同会員)は86名に達しました。


 しかし、結成総会での御提案により、メーリングリストを開設しましたが、多くの会員がインターネットを利用されていないため、会員の皆さま全員にあまねく会の活動の状況やさまざまな情報をお伝えすることができないため、季刊「オオサンショウウオ通信」を発行し、年4回お届けすることにしました。 


メーリングリストに参加登録いただいた会員にはリアルタイムに情報をお伝えできますが、その他の会員には年4回の「通信」のみとなり、情報格差が生まれますが、零細な市民団体ゆえの脆弱な事務局体制、資金環境に免じご海容下さいますようお願い申し上げます。 


次号には皆さまのご意見・ご提案や自己紹介記事も掲載したいと思いますので、ぜひ事務局へ投稿をお願いします。


今年も残り僅かとなりました。会員の皆さまにはお健やかに良い年をお迎えになるよう祈念致します。

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2.メーリングリストの開設について

 メーリングリストのアドレス: oosansyouuo_iga@yahoogroups.jp 


 結成総会でのご要望により、会員(正会員・賛同会員)対象のメーリングリストを開設しました。

 会員になっていただきますとインターネットご利用の方には「メーリングリストへのご招待状」をお送りしています。 招待状に記載されているメッセージに従って、単に、返信するだけで簡単に参加登録できますのでぜひご参加ください。

 会員の情報共有、会員相互の情報交換がリアルタイムにできるようになります。

 それ以外の会員もYAHOOの会員に登録すれば上記のアドレスにアクセスすることにより掲示版を見ることができます。



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3.川上ダム建設の状況報告 

川上ダム建設所が毎月発行している「川上ダム通信」の4月号で及川所長は次のように述べました。


(以下引用)


去る3月31日に、伊賀上野地域の永年の念願でありました川上ダムの建設事業について、治水、利水、河川環境の面から正式に位置づけた淀川水系河川整備計画が策定されました。


 また、4月17日には、川上ダムの建設事業を水資源開発の面から正式に位置づけた淀川水系における水資源開発基本計画の変更が閣議決定されました。


 これらの2つの法定計画により、川上ダム建設事業は国の施策として明確に位置付けられ、地元伊賀市の多くの皆さまの期待に応えるべく、新たな段階に歩みを進めることとなりました。


 従前の計画から、社会情勢の変化を踏まえた新たな川上ダム計画が位置づけられるまでに多くの時間が費やされたことになります。 


この間、先祖伝来の土地を離れ、ダムの完成を今か今かとお待ちいただいた地元の関係の皆さまには、多くのご心配をおかけし、また、多方面からご協力いただきましたことに対しまして、事業者を代表して心からお詫びを申し上げ、また、感謝を申し上げる次第であります。


 (中略)


 どうか、これから進展して参ります川上ダム建設事業につきまして、広く一般の方々からご支援をいただき、早期の供用に努めて参りたいと考えておりますので、旧来に増してのご指導・ご鞭撻をお願い致します。


 しかし、その後、8月30日の衆議員選挙により政権が自民党から民主党に交代、そして、鞆の浦景観訴訟原告勝訴、行政刷新会議の事業仕分けなど、政官業の癒着で行き詰った社会からの脱却を期待させる目まぐるしい変化がありました。 前原国土交通大臣の思い切った判断で、全国の、ダム本体未着工の直轄ダム事業は、現状から新たな段階に入らない(一時凍結)となり、川上ダムも例外ではありません。


 (独立行政法人)水資源機構川上ダム建設所は21年度予算(38億円)を年度内に消化しようと必死に仮排水路トンネンル工事や付替え道路の工事を進めています。 


事業仕分けの結果を踏まえた22年度予算編成が注目されるところですが、もはや破産状態にあるわが国が、いつまでもムダな大型公共事業の象徴であり、高級官僚の天下りシステムを支える「要らないダム」の建設を続けられるはずはない。


 新政権には公益法人の解体、地方出先機関(近畿地方整備局など)の廃止、地方分権などわが国に新たな市民中心の社会を形成するために英断を期待したいと思います。


 とは言うものの、今後、どのような展開になるか、ダム建設が進む地区の住民のみならず、多くの国民が、期待と不安がないまぜになった複雑な心境なのではないでしょうか?


 本稿では「川上ダム通信」の一部を紹介し、政権交代後の情勢変化について述べましたが、もはや私たちの会が、一出先の工事屋にすぎない川上ダム建設所(長)を相手にもの申す必要はないと言うことは明らかです。 

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 4.国土交通大臣ほかに要望書を提出 

※同趣旨の要望書を文部科学大臣、環境大臣、文化庁長官にも提出。 


「三重県におけるオオサンショウウオ保護上の喫緊の問題は、累計978個体もの生息が確認された木津川の支川前深瀬川水系(流域面積54.7km2)に建設が始まっている川上ダムです。


 いま、川上ダム建設の事業者(独立行政法人)水資源機構は、ダム本体の着工に向けて平成21年度予算38億円を年度内に消化すべく、仮排水路トンネル工事や付替道路工事を着々と進めています。 


私たちは、前原大臣に、治水に不要、利水に無用そして生態系に壊滅的被害を与える川上ダム建設事業を中止するご英断をいただきたく、つぎのことを要望します。」


要望1:国の特別天然記念物オオサンショウオ1000個体の生命を救って下さい!

要望2:COP10において、わが国が「貴重な生物オオサンショウウオを守るために川上ダムを中止した」 と発表することは、わが国が生物多様性の保全を最優先政策に位置付けていることを世界に宣言する絶好の機会です。

要望3:治水に不要、利水に無用、環境に有害な川上ダム建設を中止して下さい。 



要望4:まず、川上ダムの平成22年度概算要求額20億円を全額カットして下さい。

要望5:淀川水系河川整備方針並びに同河川整備計画を全面的に改訂して下さい。


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5.事業仕分け人まさのあつこさん(ジャーナリスト)の活躍


11月11日には行政刷新会議の事業仕分けが始まり、シンポジウムに参加者された政野淳子(まさのあつこ・ジャーナリスト)さんが「民間仕分け人」に就任され、「川上ダムのオオサンショウウオ保全」について審議の過程で国交省や環境省の官僚と激論を闘わしました。


国土交通省の概算要求に関する審議では「河川環境の復元、再生のプロジェクトの審議で復元、再生の前に、破壊を止めることが最大のコスト削減。そういう観点で開発部局と河川環境課が、議論したことはあるのかと国土交通省に質問。そして[川上ダム]、サンルダム、設楽ダムのオオサンショウウオ、カワシンジュガイ、ネコギギを引き合いに出しました。」


環境省の概算要求に関する審議では「生物多様性」と付くコマで、[川上ダムのオオサンショウウオ]について2回シャウトしました。


生物多様性のモニタリング調査費の要求に対して、すでにあるREDデータブックすら活用していない、情けない「種の保存法」しかなない、いくら調査してもムダだ、種の保存法の改正に踏み込まなければダメだ、大阪府と大阪市が水を融通しあえば不要になる[川上ダム]で、オオサンショウウオの生息地を沈めてしまうぐらいの法律しかないのでは、調査ばかりやってもムダだ。種の保存法の改正が先だ。本気でそう思ったので調査費に「廃止」とつけました。」

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6.日本ユネスコ協会連合会の“未来遺産


プロジェクト”に応募

三重大学人文学部教授朴恵淑さんから、(財)日本ユネスコ協会連合会の“未来遺産プロジェクト”事業の情報提供をいただきました。


“世界遺産“でなくても”未来遺産“に登録され、加えて助成金の交付が受けられれば今後の運動展開の一助となると考え、同プロジェクトに申請しました。


全国の自然保護団体やまちづくり市民団体から応募があるため合格するかどうか分かりませんが、チャレンジしました。


(以下は、申請内容の一部)


「現在、この地域における緊急かつ重要な問題は、累計978個体ものオオサンショウウオの生息が確認された木津川の支川前深瀬川水系(流域面積約60km2)に建設されようとしている川上ダムです。


ダム事業者は、「ダム湛水域に生息する約200個体を湛水域上流域に移転させても生存に影響は少ない」として年内にも移転を開始しようとしています。


しかし移転地である上流域にも多くのオオサンショウウオ個体群が生息しており、そこに下流で生息していた多数のオオサンショウウオを投入すれば、餌や巣穴の奪い合い、大きく強い個体による小さく弱い個体の共食いなどの闘争が起こり、やがて先住者、移住者ともに個体数の減少を招き、ひいては絶滅に向けて突き進むことになります。


私たちは、3億年の悠久の生命の連鎖が断ち切られるのを座視できません。文化庁、三重県、伊賀市が文化財保護行政機関としてオオサンショウウオとその生息環境まるごとの保護に万全を期して取り組まれるよう期待し、応援したい。」

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7.COP10事務局へ出展の問い合わせ

11月9日生物多様性条約第10回締約国会議支援実行委員会事務局に関連の行事等、特に来年5月の「国際生物多様性の日」・開催半年前記念行事、及びCOP10開催期間中に、会場でブース展示を行い、発表・交流を図ので、それらの募集・参加申込・支援/協力などについての情報、資料、参加申込書などをご提供下さいと連絡しました。


同事務局から次のような返信がありました。


「ブース出展のお申し出をいただき誠にありがとうございます。


COP10が開催される名古屋国際会議場につきましては、会議の主催者である生物多様性条約事務局(国連)の管理となりますが、当支援実行委員会では、以下の2会場において、NGO/NPO、企業等からの発表・交流の機会を設けます。」


(・白鳥地区、愛・地球博記念公園会場)

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.産経新聞伊賀版 連載記事「Be」

伊賀のたからもの・特別天然記念物オオサンショウウオ」

オオサンショウウオ(学名:Andrias japonicus)は、日本だけに見られる種で、岐阜県以西の河川に生息する世界最大(全長1.7mが国内最大)の両生類です。


他に中国種、アメリカ種がいます。約3億年前に現われ、約3千万年前から形態がほとんど変化していないので“生きた化石”と呼ばれています。わが国では、昭和27年に「天然記念物のうち国家的に、世界的に価値が高いもの」として“特別天然記念物”に指定されました。


「生態系保全の象徴」オオサンショウウオが生息する川は、瀬や淵など複雑な流れをもち、水温25℃以下、流速、水深、底質など変化に富んでいます。川底や岸辺には体を潜ませる隙間や穴が多く、餌となる魚、カニ、カエルなどの動物が豊富です。


三重県での自然分布域は、木津川上流の伊賀地域です。この地域は、1960年代から開発が進み、河川改修などによって、巣穴の減少、ダムや堰堤などによる移動障碍、生活排水による河川の汚濁など、生息環境は悪化の一途を辿っています。


そして、喫緊の問題は、累計978個体もの生息が確認された木津川の支川前深瀬川水系(流域面積約60km2)に建設している川上ダムです。


ダム事業者は、ダム湛水域に生息する約200個体を「上流域に移転させても生存に影響は少ない」として移転を開始しようとしています。


しかし移転地にも多くの個体群が生息し、そこに下流で生息していた多数の個体を投入すれば、餌や巣穴の奪い合い、大きく強い個体による小さく弱い個体の共食いなどの闘争が起こり、やがて先住者、移住者ともに減少し、絶滅に向けて突き進むという研究者の発表があります。


せいぜい500万年ほどの人間の所為によって3億年の生命の連鎖が断ち切られようとしている。


これほど多くの個体が生息する前深瀬川で地域住民や国が保護・保全できなければ、一体全国のどこで誰が特別天然記念物の生物を守れるのでしょうか。


来年10月に名古屋市で生物多様性条約第10回締約国会議 (COP10)が開催されます。


この会議に政府は「2050年までに生物多様性の損失を止め、現状以上に豊かにする」という中長期の国際目標と2020年までの「生態系を保全する面積の拡大」など9つの短期目標と17の指標を提案しようとしています。


まさに日本の生物多様性国家戦略の真価が川上ダムの予定地で問われています。

                 伊賀の特別天然記念物オオサンショウウオを守る会 川上 聰)


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6月22日(独)川上ダム建設所が、淀川水系流域委員会の木津川上流視察の際に説明に使った看板


【写真】:(省略)


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深瀬川と川上川での確認個体(調査期間13年間の累計):


<ダム堤体上流>


・ダム湛水域:118(前)+70(川)=188個体


・湛水域上流の前深瀬川:334個体


・湛水域上流の川上川:369個体


<ダム堤体下流 木津川含む>87個体


合計:978個体 

※ある研究者は、実際は調査で確認された数の十倍は生息しているだろうと述べた。


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この小さな水系に、なぜこのように多くのオオサンショウウオが生息し続けられたのか、生息することができるのか、まだ、何も解かっていない。


人智の及ばざるところなのではないか?

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【コラム】


【シーボルトのオオサンショウウオ】 

【江戸時代シーボルトがオランダに持ち帰った鈴鹿産のオオサンショウウオ(2個体)】






10月12日の結成総会で藤田 諦(あきら)さん(元亀山市立関中学校校長)が「シーボルトのオオサンショウウオ」の写真などを掲示して下さいました。


その写真の標本は、江戸時代シーボルトがオランダに持ち帰った鈴鹿産のオオサンショウウオ(2個体)のものだそうです。以前、藤田さんがオランダに駐在していた知人の商社マンに依頼して、当時改装中で混乱していたライデン国立民族学博物館で苦労して見つけてもらったのだそうです。


このことを「Foreverオオサンショウウオシンポジウムin伊賀・青山」に講師として招いたNPO法人日本ハンザキ研究所所長の栃本武良さんにメールでお知らせしたところ、早速「シーボルトのオオサンショウウオ」というレポートを掲載した「姫路市立水族館だより~やまのうえのさかなたち№37」をお送り下さいました。早速藤田さんにもコピーを送りました。


藤田さんの掲示資料の写真と山口隆男先生撮影のレポート所載のものとは多分同じ個体だと思われますが、前者は大小の2個体が写っており、全長の大きい個体は、正確ではありませんが優に70~80㎝位はあろうかと思われます。


1個体ずつ映った山口先生の写真もラベルの相違から2個体と思われますが、標本に添えられたスケールからはどちらもそう変わらない全長のように見えます。


以下は余談ですが、全国水環境交流会の理事を務める私は事業の一環としてオランダの環境保全団体(Het Groninger Landschap)と交流があり、2005年に渡蘭したことがあります。次回オランダを訪れる折にはシーボルトの著書「江戸参府紀行」や、亀山市、鈴鹿川、ニホンオオサンショウウオの資料などを持参し、ライデン民族学博物館を訪ねて交流したいと思います。(川上)

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書籍紹介コーナー

「どうしてもダムなんですか?

  ~淀川流域委員会奮闘記」

  http://www.tsutaya.co.jp/works/40862978.html

                        (岩波書店 11月25日発売1700円)

 平成13年2月から三期8年間にわたり、河川行政を改革しようと奮闘した淀川水系流域委員会を傍聴・取材してきた古谷桂信氏(フォトジャーナリスト)のルポルタージュ。

改正河川法の精神にのっとり、河川整備計画の策定に学識経験者や流域住民の意見を反映させるために国が設置した「淀川水系流域委員会」。

 ここに本気で川を再生したいと願う、個性あふれる人々が集い、8年間700回にわたり真剣な議論を繰り広げた。

「徹底した情報公開と住民参加」という原則を貫いたこの委員会は、これまで国が諮問した委員会とは全く別物で「国がここまでやるか!」と社会の注目を集めた。そして、委員会は「原則としてダムはつくらない」と提言し、社会は瞳目した。

国は激怒し、委員会VS国交省官僚のバトルが始まった。流域委員会を潰そうとさまざまに画策を巡らす国交省の官僚たち。そして裏で実験を握る天下りOBの暗躍。

「住民の命を守るため流域全体で洪水を受け止める[流域治水]の考え方か、それとも、何がなんでもダム建設なのか?」。そして、流域環境を回復させる川づくりのあり方とは・・・

「淀川水系流域委員会」の取り組みを辿ることは、日本の河川行政の現状と問題点を浮き彫りにする。

現場から民主主義の躍動を伝える迫真のルポルタージュ。


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9.田口勇輝さんとのやりとり

産経新聞伊賀版に私が執筆した「伊賀のたからもの」という記事(10月22日掲載)を会員の田口勇輝さんにお送りしましたところ、早速、専門家としてのお立場からのご質問や見解をいただきました

<川上→田口さん>サンケイ新聞伊賀版記事をお送りします。間違っていたらアドバイスください。 

  
<田口さん→川上>
ケイ新聞伊賀版の記事を拝見いたしました。いろいろなメディアへのご発信、ご苦労様です。文章の大きな流れとしては問題ないと思いますが、僭越ではございますが、少し気になったところを以下に書かせていただきます。

・「全長1.7mが国内最大」 → この記録の出典はどちらでしょうか。私の把握しているところでは、桑原2004※1による、全長150.5cmというのが日本記録となっております。

※1 桑原一司 (2004) 日本一大きいオオサンショウウオのなぞ.(松井輝明・池田明子 編)pp216-218,広島県の不思議辞典.新人物往来社,東京)

・「水温25度以下」 → 姫路城や皇居の堀からもオオサンショウウオの発見例があり、それらの場所では25度を超えるところもあると思いますので、「水温が比較的低く」という表現のほうがいいかもしれません。

・「先住者、移住者ともに減少し、絶滅に向けて突き進む」 → 移住先では、移住した大きな個体が、先住する小さな個体を食べる可能性はあると思います。しかし、両方が減少して絶滅に向けて突き進む、という論理はよく分かりませんでした。


<川上→田口さん>
・「全長1.7mが国内最大」については、いずれもさる5月30日の「Foreverオオサンショウウオシンポジウムin伊賀・青山」終了後の懇親会で栃本先生から伺い、「人間の身長と同じぐらいですね」と相槌を打った記憶が残っています。

・「水温25度以下」についても、栃本先生から「水温25度を超えると生きられない」と伺いました。

・「先住者、移住者ともに減少し、絶滅に向けて突き進む」は、清水善吉さんのご講演の内容、および、だいぶ以前に読んだ、生物学か生態学の文献に、動物種の多くが「その生存数500個体を割り込むと急速に絶滅に向かう」と述べられていたことから記述しました。(このことについて記述した文献を探したのですが、すぐには出てきそうにありません。)

・下流のダム淡水域(前深瀬川及び川上川)に生息している約200個体を、両河川の上流域におい て一定密度で安定して生息する合計約700個体群の生息域に移転・放流するという行為は、<人為的に>巣穴、餌、異性などをめぐる闘争により安定した生存環境から一転して弱肉強食環境への変化を招き、少なくとも200+700=900の安定した生息環境を形成するとは考えにくいと思います。

この結果、うまくいっても200+700=700、そして、ダムという巨大な河川構造物によって河川  縦断方向の連続性が断たれることから、上下流の遺伝的交流が断たれることによって遺伝的劣  化が起こり、さらに減少して行く、また、餌となる魚などにも連続性遮断の影響は避けられない。

このような要因から数十年~数百年のスパンでみると絶滅への道を辿るであろうと推測されます。

<田口さん→川上>
全長と水温については、栃本先生に伺っておきます。全長については、日本のオオサンショウウオは150.5cmが文献(桑原2004)で確認できる日本最大記録ですが、チュウゴクオオサンショウウオはさらに大きく(2m近くに?)なるようです(Squire 2007※2)。

※2 Chinese Giant Salamander: The World's Biggest Amphibian (Supersized!) by Ann O. Squire

(→栃本先生に伺いましたところ、やはり150.5cmがきちんと証拠のある日本最大の個体ということでした。また、水温については、きちっとした調査はなされていないので、「一般的に~と言われている」という表現にしたほうが良いとのことです。)

「その生存数500個体を割り込むと急速に絶滅に向かう」というのは、保全生物学(保全生態学)の教科書に出てくる内容ですね。

例えば、プリマック・小堀(2008)「保全生物学のすすめ」

※3 や 

※ ・矢原(1996)保全生態学入門

※4 などがその教科書としてあげられます。

ただ、この500個体というのもあくまで概算値ですので、それぞれ異なった生態をもっている種ごとにその値は変わってくるので総合的な評価が必要です。

※3 リチャード B プリマック・小堀洋美 (2008) 保全生物学のすすめ 生物多様性のためのニューサイエンス 改訂版.文一総合出版,東京

※4 鷲谷いづみ・矢原徹一 (1996) 保全生態学入門 遺伝子から景観まで.文一総合出版,東京

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総会のときに発言させていただきましたが、個体を移動させることによる悪影響は程度の差こそあれ、確実にあると思います。

ただし、生物の保全にとって大切なことは、1か0ではなく、影響がありそうな場合に、いかにベターな選択肢を考えうるかだと考えています。

 ダムを作らないのが最も理想的ですが、どうしても作らなければならないとなったときに、より影響の少ない方法を提案することが大切です。

 (もちろん、私もダム作成には反対です。

ただ、ダムを作るときの利点・欠点、ダムを作らないときの利点・欠点を、きちんと把握できていない状態です。)


ダムで沈む水域に生息するオオサンショウウオの対処法について、すぐに考えうる選択肢は、


A)200個体を上下流へ移動させる

B)200個体を放置する

C)200個体を飼育する

くらいでしょうか。

それぞれの選択肢における考えられる結果は長くなりそうですので今回は割愛しますが、ぼくは上下流への移動を確保(分断を解消)したうえで、Bの選択肢をとるのがベターではないかと考えております。

このようなQ&Aを含めたオオサンショウウオ勉強会を開いて、メンバーの方々にオオサンショウウオのことを知っていただく機会を与えていただければと考えております。

勉強会の事前に、会の方々から様々な疑問を送っていただき、勉強会でそれにお答えさせていただくようなかたちでもいいかもしれません。

<川上→田口さん>
先日総会終了後に頂戴した「博士論文」を読ませていただいているところです。統計処理などに専 門的な方法や用語があって、素人の私には理解の及ばない箇所もあります。皆さんが田口さんの 講義を聞きたいと希望していらっしゃるので、改めて講師をお願いいたしますが、その折ご教示頂 けるとありがたいです。

<田口さん→川上>
博士論文、読みにくい文章で申し訳ございません。また勉強会の機会を与えていただけましたら、 オオサンショウウオの生態や形態、保全上の問題点などについて、研究結果や最新の報告例を  交えてお話させていただければ幸いです。

なお、私のような若輩者が差し出がましい発言をし、皆様の活動の足をひっぱることにならないようには気をつけたいと考えております。

その中で、より科学的な議論を行い、データに根ざした、外部への情報公開を行っていければ、この会の存在意義はより高まることになると思います。

 このことがオオサンショウウオをはじめ、伊賀の自然を残していくことにつながると確信している次第です。

以上、宜しくお願い申し上げます。


以上

※田口勇輝さんのプロフィール:士(地球環境学)京都大学大学院 地球環境学堂 景観生態保全論分野/研究員 兵庫県立大学 自然・環境科学研究所 生態研究部門/客員研究員 当会会員


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10.活動予定について


 来年1月のいずれかの土曜日に「勉強会」を開催しようと調整中です。


 「かつて阿保地区住民はオオサンショウウオとほどよく住み分けていた。しかし、人々の暮らしを豊かに、便利にしようと努力すればするほど、両者の距離はだんだんと隔たり、やがてオオサンショウウオは邪魔者にされて行った。


 いま、なぜ昔のようにオオサンショウウオと人々は共生できないのか?


 天然記念物オオサンショウウオ保全と防災・開発を任務とする行政との狭間で奮闘した一行政OBが語る真実。


 そして、オオサンショウウオの生態研究で去年地球環境学博士になった新進気鋭の研究者が語る「不思議な生き物オオサンショウウオの生態と保全上の課題」      


 講師は坂本英彰さん(元青山町職員)と会員の田口勇輝さん(京都大学大学院地球環境学堂研究員・博士)。


 このお二人の講話をもとに、私たちは地球生活者としての大先輩であるオオサンショウウオとどのように付き合い、人類が今後1万年、10万年それ以上生存し続けるために、私たちは今、何を考え、何をしなければならないかについて意見交換したいと思います。


 また、同じ1月のいずれかの日曜日に「知恵しぼり会」を開催しようと調整中です。


テーマは・・・・


(1)なぜ川上ダム建設を中止させたいのか?


(論点整理)


(2)もし川上ダム建設が中止になったら?


跡地(予定地)の再生、活用などについて


(3)地域の未来像


(4)川上ダムを確実に中止させるために必要な今後の活動は?


などについての“知恵出し”などです。


皆さまのご参加をお待ちしています。

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伊賀の特別天然記念物オオサンショウウオを守る会


 〒518-0631


[所在地] 三重県名張市桔梗が丘南1-3-40川上方


TEL: 0595-65-5785


[携帯電話] : 090-2115-1507


【Fax】 :  0595-65-5785


 scirm@ebony.plala.or.jp

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<編集後記> 


「特別天然記念物オオサンショウウオを守るために、一旦造りかけたダムを中止する!」。



これからの日本はそういうことが当たり前にできる国に“CHANGE”してほしいと切に願っています。そうでなければ、「生物多様性国家戦略」なんて偉そうに口にする資格はありません。


名古屋のCOP10も何の意味もないものになってしまうではありませんか。


一旦、種が絶滅に向かい、少数残存の状態になった生物を増殖させるために、どれだけの努力、時間、費用を必要とするかは、トキ(佐渡)やコウノトリ(豊岡)の例を見れば明らかです。


何とかオオサンショウウオがこれらの二の舞にならぬようにしたいものです。


地球は人間のためだけにあるんじゃないんだ!(SANCHAN-IGA)



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【参考リンク1】: 



伊賀の特別天然記念物オオサンショウウオを守る会 結成総会・意見交換会」の開催     

http://blog.goo.ne.jp/mtomiga/e/7416d5bc53ec474315c7fcb21efd642c 

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【参考リンク2】: 伊賀・水と緑の会     http://blog.goo.ne.jp/mtomiga

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【参考リンク3】: 淀川水系流域委員会とは : 


http://www.yodoriver.org/about/toha.html


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【参考リンク4】: 田口勇輝(TAGUCHI Yuki)のオオサンショウウオの研究リンク           

E-mail: y.taguchi.jgs@gmail.com   

http://www.morikawa.ges.kyoto-u.ac.jp/students/taguchi.pdf 

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【参考リンク7】: 【シーボルト】 : Wikipedia :

http://ja.wikipedia.org/wiki/フィリップ・フランツ・フォン・シーボルト


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【参考リンク8】 :【オオサンショウウオとは】:Wikipedia:



       http://ja.wikipedia.org/wiki/オオサンショウウオ

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【参考リンク9】: 【サンショウウオ目 オオサンショウウオ科 準絶滅危惧(NT)】:



     http://www.biodic.go.jp/rdb_fts/2000/72-017.html   


  【同上引用】:以下の通り


和名オオサンショウウオ
学名Andrias japonicus
原記載Temminck, C. J. Fauna Japon. 3: 26
英名Japanese giant salamander
固有性日本固有種




解説

本種は現存する世界最大の両生類であり、日本固有種。自然分布は岐阜県以西の本州と四国、九州の一部のみと考えられる。中部、近畿地方では比較的大きな河川を中心に、中国、九州地方では小河川に生息していることが多い。全長はオス、メスとも600~700mm程度のものが多いが、最大1,500mmにもなる。頭部は偏平で大きく、体には多数の小さな疣を持つ。体側から四肢の後面にかけて皮膚の襞がある。鋤骨歯列は浅いハの字型。四肢は短かく後肢は5指性。尾は著しく側偏する。背面は一般に暗褐色で、不規則な黒色の斑紋を持つ。繁殖は年1回、時期は8月下旬~9月にかけて、河川の岸にできた深い横穴でなされる。オスは繁殖巣穴を掃除し、メスの集来を待つ。ここに他のオスが侵入すると闘争がおこる。しかし、メスが穴に入って産卵が行われ始めると、周辺に待機していた複数のスニーカーオスも穴に入るという。1メスの産卵数は400~500といわれる。幼生は水生の小さい節足動物を食べ、変態までに4~5年を要する。成体はサワガニ、各種淡水魚を食べ、ヘビやカワネズミを食べた例も知られる。野外では最低10年は生存が確認され、飼育下では51年生存したという記録がある。
生涯のほとんどを河川で過ごすため、各河川に生息する個体群は分断されていると思われる。また、多くの河川で、人工の堰堤が移動の障壁となっている。かつては食用とされていた。堰堤の建設、護岸工事、ダムの建設など、河川の改変により生息地が破壊されている。地域によっては移入種チュウゴクオオサンショウウオ(Andrias davidianus)と競合している恐れがある。国の特別天然記念物に指定され、岐阜、岡山、大分の一部では生息地が天然記念物に指定されている。

参考文献
1.生駒義博(編), 1973. 日本ハンザキ集覧. 津山科学教育博物館,津山市. 478pp.
2.小原二郎, 1979. オオサンショウウオ. 第2回自然環境保全基礎調査動物分布調査報告書(両生類・は虫類)全国版, pp.41-45. 日本自然保護協会,東京.
3.小原二郎, 1985. 大山椒魚. どうぶつ社, 東京. 236p.
4.大野正男, 1981. オオサンショウウオ. 第2回白然環境保全基礎調査動物分布調査報告書(両生類・は虫類)全国版(その2), pp.55-70. 日本自然保護協会,東京.
5.栃本武良, 1995. オオサンショウウオ. 日本の希少な野生水生生物に関する基礎資料(?), pp.422-428. 日本水産資源保護協会,東京.

松井正文(京都大学大学院人間・環境学研究科)



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