2010年4月22日木曜日

国家海洋局「2010年海洋科学技術業務要点」を発表:人民網日本語版 2010年4月19日

【出展リンク】: http://j.people.com.cn/95952/6955712.html


国家海洋局「2010年海洋科学技術業務要点」を発表

 国家海洋局はこのほど、「2010年海洋科学技術業務要点」を打ち出し、今年の海洋科学技術業務に向けた構想と、今年実施する任務10項目を明確にした。「科学時報」が19日に伝えた。

 10項目の業務とは以下のとおり。

 (1)「第12次五ヵ年計画」における、海洋科学技術の計画を急ぎ制定し、そのための準備作業をしっかりと行う。

 (2)海洋をめぐる新興産業のより良くより速い発展を推進するべく、科学技術による海洋振興計画綱要の実施に力を入れる。

 (3)海洋調査をさらに規範化し、海洋調査の常態化を徐々に展開・推進していく。

 (4)海洋における公益プロジェクトの管理を積極的に行い、全国の科学技術による海洋振興技術システムの建設を推進していく。

 (5)国による「908プロジェクト」の成果のまとめ、検収業務をしっかりと行い、「デジタル海洋」の業務化実現に向け試運行を行っていく。

 (6)海水利用の管理を強化し、海水利用産業の発展にプラスとなる政策環境を整えていく。

 (7)海洋エネルギーの発展戦略と計画・研究を進め、海洋エネルギー産業のレベルアップと大規模化を推進していく。

 (8)海洋衛星は、試験運用型から業務サービス型への転換を進めていく。海洋衛星の業務応用・サービス体系を確立する。

 (9)国の財政資金効果を十分に発揮し、海洋科学技術のソフト・ハードレベルを絶えず高めていく。

 (10)海洋科技管理制度を徐々に完備させ、海洋科学技術イノベーションに向けた良い環境を整えていく。(編集SN)

 「人民網日本語版」2010年4月19日

琵琶语 (The Language of Pipa)




【出展リンク】: http://www.youtube.com/watch?v=domQxO-0niQ

kenlautic  2008年11月24日 — Title: 琵琶语 Artist: 林海 Album: 琵琶相 Dance: 琵琶行
カテゴリ:音楽

大陸が考慮されたマントル対流の数値シミュレーション:www.jamstec.go.jp

【出展・引用リンク】: 

http://www.jamstec.go.jp/res/ress/myoshida/res_continent.html



大陸が考慮されたマントル対流の数値

シミュレーション



■はじめに

地球内部の進化やダイナミクスにおける未解決問題を解明しようとするとき、 数値シミュレーションは、地質学・地球物理学的観測、岩石の物性実験、 地球化学実験、理論などに並ぶ重要な研究手法の一つである。 特に、マントルの内部構造の進化、ひいては地球の進化に多大な影響を 及ぼしてきたと考えられるマントル対流と表層運動(大陸・海洋リソスフェアの運動) との熱的・力学的相互作用の歴史(時間変化)の解明には、 数値シミュレーションが非常に有効な手段である。地球表層を「漂う」大陸(大陸リソスフェア)は離合集散を繰り返しながら 約4~7億年周期で超大陸を形成する。 地質学的証拠から少なくとも過去に3回、 超大陸(3.5億年前のパンゲア超大陸、9億年前のロディニア超大陸、18億年前のヌーナ(コロンビア)超大陸)が 形成されたことが分かっている。6.5億年前のパノティア(ゴンドワナ)超大陸は比較的小規模の超大陸である。 このような大陸の離合集散と超大陸の形成はマントルの内部構造に大きな影響を及ぼしてきたと考えられる。
図の説明: 時間と超大陸形成の関係。 緑色で示された期間はそれぞれの超大陸が形成され 分裂が開始するまでの時間を表す。

■これまでの大陸モデル

大陸、あるいは超大陸が考慮されたマントル対流の数値計算研究は、 1988年に発表されたガーニスの二次元矩形モデル(Gurnis, 1988)を筆頭に、 1990年代の計算機性能の向上を経て、1999年に発表された我々の三次元球殻モデル以降、 世界の幾つかのグループによって研究が進められている。 これらの研究から得られた主な結論は次の通りである。 (1)超大陸による熱遮蔽効果(Anderson, 1982)によって、 超大陸直下のマントルの温度が上昇し、やがてマントルに全球規模の 流れを引き起こし、degree-1温度構造(超大陸下に上昇流、 海洋側に下降流が卓越する構造)が形成される。 その結果、CMBから大規模な上昇流が数億年の時間スケールで超大陸下に発生する (Yoshida et al., 1999; Yoshida, 2010a)。
図の説明: 超大陸を変形のしない剛体的な「蓋」(透明の緑色部分)と仮定し、 対流するマントルの上に設置した場合のマントル対流パターンの時間変化。 超大陸は空間的・時間的に固定されているが、 計算の途中で超大陸を対蹠点に移動させている。 超大陸下のコア・マントル境界から巨大なプルームが発生する。
(2)超大陸縁辺での海洋プレートの沈み込みによる補償流(CMBからの上昇流) によっても、超大陸直下の温度上昇が起きる(Zhong et al., 2007)。 (3)超大陸下の熱遮蔽効果に伴うマントルのdegree-1構造の形成(結論(1))は 大陸の周期的な離合集散を導く。特にコアからの加熱の割合が大きい場合には、 積極的な上昇プルームの発生により、その周期が実際の大陸の離合集散のよう に不定期間隔になる(Phillips and Bunge, 2005; 2007)-などである。

■新しい大陸モデル

しかしながら、これらの研究では、大陸は剛体的な(変形のしない)高粘性の「板(あるいは蓋)」と モデル化されてきた。大陸は本来、地球史を通じてマントル物質の融解と化学分化により生成されるものの、 その存在はマントル対流システムとは力学的にほぼ独立した領域(物理的には、 物質拡散がほぼゼロの流体の集合体)だからである。そのため、 マントル対流計算で用いられる通常の計算手法の枠組みでは計算精度の問題により、 大陸をモデル化することが非常に困難であった。 そこで、私は最近、粒子法と呼ばれる手法を発展させることで、大陸自体の変形とその移動が可能な 独自の三次元マントル対流モデルを発表した(Yoshida, 2010b)。 マントルと大陸のレオロジーや物性に関して現実的なパラメータを 用いて予備的な計算を行ったところ、超大陸の自発的な分裂、 超大陸下の熱遮蔽効果、大陸縁辺での海洋プレートの沈み込み、 約5億年後の大陸同士の衝突、大陸の衝突帯の形成-など、 ウィルソンサイクル(Wilson, 1966)の大部分を再現する計算結果が得られた。 また、地球の「拡散プレート境界」を模した大陸縁辺の低粘性帯の存在が、 地質学的時間規模での大陸クラトンの安定性に寄与することが分かった。
図の説明: 変形と移動が可能な大陸が考慮されたマントル対流の数値シミュレーション。 矢印に沿って時間が進む。 紫色はマントル上昇流、水色はマントル下降流(沈み込むプレート)、 茶色は大陸の位置を表す。
今後はこのモデルをさらに改良・発展させ、 過去から現在までのマントル対流と大陸の熱的・力学的相互作用、及び地球内部の変動の歴史を解明し、 地球ダイナミクス研究の発展の一助となるべく研究を進める予定である。

■参考文献

  • Masaki Yoshida, Yasuyuki Iwase, and Satoru Honda, Generation of plumes under a localized high viscosity lid on 3-D spherical shell convection, Geophysical Research Letters, 26(7), 947-950, 1999.
  • Satoru Honda, Masaki Yoshida, Sakie Ootorii, and Yasuyuki Iwase, The timescales of plume generation caused by continental aggregation, Earth and Planetary Science Letters, 176(1), 31-43, 2000.
  • Masaki Yoshida, Temporal evolution of the stress state in a supercontinent during mantle reorganization,Geophysical Journal International, 180(1), 1-22, doi: 10.1111/j.1365-246X.2009.04399.x, 2010a.
  • Masaki Yoshida, Preliminary three-dimensional model of mantle convection with deformable, mobile continental lithosphere, Earth and Planetary Science Letters, 2010b, in press.

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第I部 東アジアとの新たな関係と国土交通施策の展開

【出展・引用リンク】:

http://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h16/hakusho/h17/html/g1022001.html

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第I部 東アジアとの新たな関係と国土交通施策の展開



(東アジア諸国・地域及び日本の港湾・空港)
港湾・空港については、東アジア諸国・地域を中心とする人流・物流の増大、交通手段の発達、海運の大容量化(大型船化)等が進んだことを背景として、東アジア諸国・地域で整備が進んでいる。その結果、東アジア諸国・地域の港湾・空港の整備は充実し、取扱能力が向上するとともに、一部の港湾・空港は取扱実績で日本を上回りつつある。
 
図表I-2-2-2 東アジア諸国・地域と日本の主要港湾の現状と計画
東アジア諸国、地域にはバース数や2003年のコンテナ取扱量で日本の港湾を上回る港湾がある。中国の香港は22バース、2045万ティーイーユー、シンガポールは37バース、1810万万ティーイーユー、中国の上海は19バース、1128万ティーイーユー、中国の深センは14バース、1061万ティーイーユー、韓国の釜山は21バース、1041万ティーイーユー、台湾の高雄は26バース、884万ティーイーユーである。日本の港湾は東京が12バース、331万ティーイーユー、横浜が16バース、251万ティーイーユー、名古屋が8バース、207万ティーイーユー、神戸が12バース、205万ティーイーユー、大阪が8バース、161万ティーイーユーなどとなっている。

 
図表I-2-2-3 東アジア諸国・地域と日本の主要空港の現状と計画
東アジア諸国、地域には滑走路数や2003年の発着回数で日本の空港を上回る空港がある。中国の北京は滑走路2本で約23万6千回、タイのバンコクは2本で約21万4千回、中国の香港は2本で約16万回、インドネシアのジャカルタは2本で約18万7千回である。日本は成田が2本で約17万2千回、関西が1本で約10万1千回などとなっている。

港湾について見ると、我が国に輸出入されるコンテナのうち東アジア諸国・地域の主要港湾において積替輸送される貨物量は増加し、非直送率も上昇している。また、我が国の港湾における基幹航路寄港便数が減少している一方で、東アジア諸国・地域の主要港湾における基幹航路寄港便数は増加している。
こうしたことから、我が国港湾の国際的な地位が、東アジア諸国・地域と比べて相対的に低下傾向にあると推測される。また、実際に、利用ランキングを見ても東アジア諸国・地域の一部の港湾が日本の港湾を上回っている状況にある。特に中国の主要港湾の伸びが目覚ましく、上位を複数占めている状況にある。
 
図表I-2-2-4 東アジア諸国・地域と日本の主要港湾コンテナ取扱量ランキング(2003年)
港湾のコンテナ取扱量ランキングでは東アジア諸国・地域の港湾が上位6位までを占める。1位は中国の香港で約2045万ティーイーユー、2位はシンガポールで約1810万ティーイーユー、3位は中国の上海で約1128万ティーイーユー、4位は中国の深センで1061万ティーイーユー、5位は韓国の釜山で約1041万ティーイーユー、6位は台湾の高雄で884万ティーイーユーである。日本の港湾は東京が世界17位で331万ティーイーユー、横浜が27位で251万ティーイーユーである。
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また、空港についても、利用ランキングで東アジア諸国・地域の一部の空港が日本の空港を上回っている状況にある。
 
図表I-2-2-5 東アジア諸国・地域の主要空港ランキング(2003年)
東アジア諸国、地域には国際貨物取扱量や旅客数で日本の空港を上回るものもある。国際航空貨物取扱量では中国の香港が世界1位で約264万トン、成田が2位で約209万トン、ソウルのインチョンが3位で約181万トン、シンガポールが5位で約161万トン、台北が7位で約149万トンであり、世界上位30空港のうち10を東アジア諸国・地域と日本の空港が占める。国際航空旅客数では香港が世界第5位で約2675万人、シンガポールが第7位で約2314万人、成田が8位で2243万人、タイのバンコクが9位で1939万人である。
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さらに、こうした港湾・空港という玄関口だけでなく、港湾・空港と国内各地を繋ぐネットワークも形成されつつある。
東アジア諸国・地域では、国境を越えた経済活動の機能分担が進んでおり、日本が東アジア諸国・地域を相手に競争力を維持するため、コスト、運用方法、手続等のソフト面も併せた総合的な能力の維持・向上を目指す必要がある。


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鉄鋼のように強い汎用プラスチックの創製

【出展・引用リンク】:

 http://www.tokyo.jst.go.jp/pr/announce/20100419-2/index.html

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鉄鋼のように強い汎用プラスチックの創製



JST(理事長 北澤 宏一)産学連携事業の一環として、広島大学 大学院総合科学研究科の彦坂 正道 特任教授と岡田 聖香 博士研究員らは、鉄鋼を超える比強度注1)を持ち、安価注2)で水に浮く軽さで、リサイクルが可能なシート状の超高性能汎用高分子材料(汎用プラスチック)の創製に成功しました。
彦坂特任教授らは、融点以下に冷やした高分子の融液注3)を引っ張って結晶化させるという極めてユニークな製法により、代表的汎用プラスチックであるポリプロピレンの結晶化度をほぼ100%に高めることに成功し、引張強度をこれまでの7倍以上の230MPa(メガパスカル)に高め、比強度を鉄鋼の2~5倍にしました。しかも超高性能高分子材料は、高価でリサイクル困難なエンジニアリングプラスチック(エンプラ)や繊維強化プラスチックなどとは異なり、通常の汎用プラスチック並みに安価で成形しやすく、リサイクルが可能という大きな利点を持っています。この成果は、彦坂特任教授らによる"高分子結晶化メカニズムの解明"という基礎科学的成果の発展により得られました。
本研究成果の展開から今後、自動車や産業用の鋼板をはじめとして金属やセラミックス、エンプラ・汎用などの従来型プラスチックの代替も含めて、国内外で広く普及することにより、低コスト、省エネルギー、省資源、低炭素の持続型社会づくりへ貢献することが期待されます。同研究グループは、共同研究企業と協力して産業化を目指しています。
本研究成果は、2010年6月発行の日本の学術雑誌「Polymer Journal」に掲載される予定です。
本成果は、以下の事業・研究課題によって得られました。
研究成果最適展開支援事業 研究開発資源活用型
研究課題名「"超臨界伸長成形機"開発による超高性能高分子創製と製品化」
研究期間平成21年9月~平成24年3月
研究開発資源活用型は、産学官連携により蓄積された研究成果、人材、研究設備等の研究開発資源を有効に活用し、実機レベルでのプロトタイプ開発等、企業化に向けた研究開発を行うプログラムです。
本課題は、実機プロトタイプの超臨界伸長成形機を開発し、実用サイズの超高性能高分子材料の成形、量産技術を確立し、製品化するものです。

<研究の背景と経緯>

高分子材料は軽量・安価・高成形性といった利点から広く利用され、世界年産約3億トン弱にも達する重要な材料です。しかし、強度や耐熱性などの材料特性が金属などより著しく劣るために高度な性能要求に応えることができません。その原因は、結晶にならない部分の比率(非晶率注4))の高さにあります。結晶性高分子は長いひも状分子ですが、融液(液体)中で毛玉のように互いに絡み合う部分が多いために、これらが薄い板状結晶にしかなれず、非晶と結晶が層構造を成し「球晶」というゴルフボールのような結晶体になります(図1)。つまり、球晶内には結晶にならず、固化しただけの非晶が半分以上残ってしまうのです。そこで世界中の科学者たちは結晶化度注5)増大の方策を探求してきましたが果たされず、現在に至っています。その難点を補完するために、高強度と高耐熱性などを特長とするスーパーエンジニアリングプラスチック(スーパーエンプラ)や繊維強化プラスチックが開発され、航空機の構造材や高級産業製品などに利用されていますが、あまりにも高価なため、汎用の工業製品などに利用することは経済的に不可能でした。
彦坂特任教授は、1987年に高分子の結晶化のメカニズムを説明する「高分子滑り拡散理論注6)」を提唱して以来、「長いひも状分子である高分子」の本性に着目し、高分子の研究を続けてきましたが、結晶性高分子が融液の状態からいかにして結晶化を開始し、固体になるのかというメカニズムを解明できずにいました。
そこで彦坂特任教授と岡田博士研究員らは、(財)高輝度光科学研究センターの大型放射光施設SPring-8注7)((独)理化学研究所 所有)を利用して、高分子結晶化初期のナノレベルのメカニズム解明に乗り出しました。「結晶性高分子の結晶化初期メカニズム解明は不可能」というのが世界の高分子専門家の常識とされている中、10年近い歳月を費やして「結晶の赤ん坊」であるナノ核注8)生成の直接観察に成功し、2007年に結晶化初期のメカニズムを明らかにしました。
この「高分子結晶化メカニズムの解明」をスタートラインとして、本研究グループは、結晶化を制御することによって、従来はなかった新しい構造と活性の発現を目指す研究を続けてきました。

<研究の内容>

本研究グループが、高結晶化度と超高性能実現の方策として狙いを定めたのは、「ナノ配向注9)結晶体(NOC:Nano Oriented Crystals)」でした。ひも状の高分子鎖が、融液段階で、毛玉状に絡まっているために非晶が発生するのですから、これを一定方向にきれいに並べた上で結晶化すれば、結晶化度の高いナノ配向結晶体が実現すると考えました。
そのためには、高分子融液を引っ張って伸ばしながら結晶化させる必要があります。しかし水を引っ張ることができないのと同様に、融液つまり液体を引っ張ることは簡単にはできません。問題は、いかにして融液を伸長するかということでした。
そこで発案したのは、融点以下に冷やした高分子の融液(これを過冷却注10)融液と言う)を潰す(compress)ことによって伸長するというアイデアでした。左右に細長い溝の中に融液を入れて瞬間的に圧力を加えて潰すと、融液内には左右に広がる激流が生じ、急流にさらされた布のようにひも状分子が引き伸ばされ、高配向したナノ結晶が実現する可能性があると考えたのです(図2)。本研究グループは、このアイデアを実現して、SPring-8において観察し、この仮説の正しさをナノレベルの解析で検証することに成功しました。
次にどの程度の速さで潰せばよいかが問題になります。そこで融点以下に冷やした高分子の融液を潰す圧力と速度を変えながら伸長と配向の様子を観察したところ、1秒間に数百倍も伸長するような、大きな伸長歪み速度注11)によって、同じ結晶化温度でも結晶化が一気に100万倍も速くなる「臨界伸長歪み速度」が確認されました(図4)。
さらに、そのメカニズムを知るために、SPring-8で臨界伸長ひずみ速度以上で伸長結晶化して得られる試料の様子を観察しました。すると過冷却融液中の高分子鎖が平行に並んだ完璧に近い配向融液になり、無数の核がミリ秒オーダーで生成し、融液全体の92%が結晶化することが確認されたのです(図5)。NOCの実現が確認された瞬間です。
NOCは、引っ張り破壊強度注12)、つまり引っ張る力に耐える強度が同重量の鉄鋼の2~5倍という値を示し(図6)、しかも耐熱性は通常のポリプロピレンより50℃以上高い176℃でした(図8)。また光の波長より小さいナノ結晶であるがゆえに高い透明性を示しました(図9)。さらに何も混ぜ物を加えないので、高い収率でリサイクルができる可能性がありました。しかも高分子融液を潰すという単純な工程が加わるだけなので、従来の成形法を少し改良した成形法で成形ができるために、製造コストは従来のプラスチックと大差はありません。
さらにこのNOCをX線回折法で調べると、20~30nm(ナノメートル=10-9m)のナノ結晶が一列に並んでいました。しかも長さが2µm(マイクロメートル=10-6m)の1本のひも状分子鎖が100個以上のナノ結晶を貫いて、強い結合によって結びつけていたのです。このひも状分子は、炭素が共有結合で連なっているものなので、ダイヤモンドと同じ強度を持っています。つまり無数のナノ結晶が整然と並び、これをダイヤモンドと同等の強度を持つひも状分子がしっかりと連結している構造だったために超高性能が生まれたと考えられます。本研究グループは、この構造を「鎧モデル」と名づけました(図10)。

<今後の展開>

NOCの優れた特性は、鉄鋼の2から5倍、アルミニウムの6倍の比強度(重量当たりの引張破断強度)と、通常のプラスチックより50℃以上高い耐熱性、透過率99%の実現も可能な透明性、さらに廃材が高率で再生可能な高リサイクル率の可能性などさまざまな点があげられます。これに加え、成形性がよく錆ないなどのプラスチック本来の特性も備えています。また、NOCを折りたたんでも、力を外すと、再び元の形状に戻ります。この強靭さと弾力性の両立は、鉄鋼をはるかにしのぎます。
こうした数々の特性によって、既存の特殊な高分子材料(エンプラ)にとって代わることは十分に期待され(図11)、比強度の大きさから、鉄鋼やアルミニウムなどの金属材料に代替することで、製品の軽量化を図ることが期待されます。また、高剛性と高靱性を備え、錆ないことから、高層ビルや家屋などの建築材料にも適しており、耐水性も加味されるので、橋梁やダムなどの構造材としての利用も期待されます。
しかも透過率99%という高い透明性は、ガラスの代替材としても期待できます。
本研究グループは現在、広島大学を拠点として構造・物性研究開発を続けており、関連企業注13)も共同研究に加わり産業化を目指しています。JSTも平成18年度以降、シーズ発掘試験、育成研究、研究開発資源活用型とシームレスな支援を行っており、その推進を後押ししています(図12)。論文においては210MPaだった引張り破壊強度は、現在、230MPaに向上しており、特性は今後もさらに向上するものと予測されています。

<参考図>

図1

図1 従来型の高分子結晶の成り立ち(画像提供:広島大学 戸田 昭彦 教授)

通常、長いひも状の高分子は、融液(液体)状態では毛玉のように互いに絡み合い、結晶状態では折りたたまれるようにして厚さ10nmの薄板状の「折りたたみ鎖結晶」となります。これがさらに非晶と交互に積み重なった積層構造を構成し、これを素材として、球晶というゴルフボール状の数十~数百µmサイズの粗大な結晶を構成します。このため、その結晶化率は50%に満たず、これがプラスチックの弱さの要因となっています。
図2

図2 押し潰しによる伸長結晶化の原理図

結晶化を開始する過冷却温度に下げた高分子融液に、上部から力をかけて押し潰し、融液を急速伸長させることにより、伸長結晶化を実現します。
図3

図3 NOC生成のメカニズム

高分子の過冷却融液が押し潰されることで、高分子鎖が引き伸ばされて、配向融液となるために、微結晶の種である「ナノ核」が融液内でまんべんなく瞬時に生成されるようになります。
図4

図4 臨界伸長歪み速度の確認

10秒前後を要していた結晶化が開始されるまでの待ち時間(誘導時間)が、1秒間に200倍の伸長が実現する力を押し潰しによって加えた時点の伸長歪み速度(赤い点線部分)で、一気に10-3秒と100万倍速くなる「臨界伸長歪み速度」が発見されました。
図5

図5 NOCの結晶化

高分子融液を押し潰した瞬間にNOCが結晶化する様子をハイスピードカメラで観察した偏光顕微鏡画像。青と黄色の部分が配向結晶化している証拠です。わずか数m秒で急速に配向結晶化が進む様子が見られます。
図6

図6 プラスチックシートの引っ張り破壊強度比較

ナノ配向結晶体の引張り破壊強度は、従来の汎用プラスチックの約7倍であり、エンプラ、スーパーエンプラと同等以上であり、従来の結晶性高分子シート中では最大級の強度を示します。
図7

図7 シートの比強度の比較

図8

図8 NOCの高耐熱性

耐熱温度とは、熱変形量が3%以上となる温度を意味します。従来品(OPP)の耐熱温度と比較すると50℃以上増大しています。一般的なスーパーエンプラの耐熱温度条件は150℃以上ですが、NOCはこれを大きく上回っています。
図9

図9 結晶性高分子の透明性の比較

縦軸は透明性を示すヘイズ値注14)(資料の厚さを0.3mmに換算)。左端が透明性を高めたNOC。クリアフォルダーとは比較にならない透明であり、さらにポリスチレン製の弁当の透明な蓋より透明度はかなり高く、ガラス並みの透明度です。
図10

図10 NOCの「鎧モデル」模式図

NOCは、直径が20~30nmのナノ結晶が、伸長方向に整然と並んでいる。1本の強靭なひも状分子の長さは2µmなので、1本の分子は約100個のナノ結晶体を貫通しながら結びつけている。ダイヤモンドと同等の強度のひも状分子が、ほぼ100%結晶化されたナノ結晶を連結している様子が鎧に似ているので、その構造を「鎧モデル」と名づけました。
図11

図11 超高性能高分子材料の国内市場規模

スーパーエンプラは、フィルム、シート、板材などとして活用されており、その市場規模は7000億円を超え、世界市場の規模はその10倍です。この市場もNOCのターゲットとなります。
図12

図12 産業化を見据えた研究開発ロードマップ

<用語解説>

注1) 比強度
引張り破壊強度を比重で割った値。異種材料の強度を相互比較する場合に用いる。
注2) 安価
ポリプロピレンやポリエチレンなどは、百数十円/kgと安価である。
注3) 融液
1つの物質のみが融けた状態の液体のこと。液体は、2つ以上の物質が溶けた状態の溶液と融液に分類される。
注4) 非晶率
結晶性物質において、結晶にならずに単に固化しただけの相の比率。結晶化度に対応する用語。
注5) 結晶化度
固体に含まれる結晶の割合。
注6) 高分子滑り拡散理論
「高分子は長いひも状分子が絡み合いを解き、蛇のように滑りながら結晶格子上に配列していく」という理論。1987年に彦坂 正道 教授が提唱した。
注7) 大型放射光施設SPring-8
兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高性能の放射光を生み出すことができる大型放射光施設。放射光は、明るく、指向性が高い電磁波。SPring-8は、世界最高の輝度、エネルギーを持つ放射光を生む能力を持ち、従来不可能とされたナノサイズの物質の構造や機能の解析に活用されている。
注8) ナノ核
結晶の赤ん坊、または種のこと。約0.数nm以上のサイズで、原子・分子で数えると数個以上集まった結晶。
注9) 配向
分子や結晶の向きが揃っていること。高分子の結晶においては、ひも状の微結晶や高分子鎖が一定方向に配列されていることを言う。
注10) 過冷却
過冷却とは物質の相変化において、変化するべき温度以下でもその状態が変化しないでいる状態のことで、過冷却度とは物質の融点と結晶化する温度との差。結晶化温度を変えることにより、過冷却度を変えることができる。
注11) 伸長歪み速度
伸長変形の速度。ある長さの試料を1秒間に伸ばした長さが元の長さの何倍かで表わす。例えば、1秒間に元の長さの10倍引き伸ばした場合は10s-1と表記する。
注12) 引っ張り破壊強度
実用材料の強度を表す基本的目安の1つ。物体を引っ張った場合に破断する強度。単位面積当たりの力で表すので、圧力と同じ単位系。従来の汎用プラスチックシート材料は、20~30MPa程度である。
注13) 関連企業
平成21年度に採択した研究開発最適展開支援事業 研究開発資源活用型においてサンアロマー(株)と(株)エフピコと共同研究を実施している。
注14) ヘイズ値
透明プラスチックの内部、または表面の不明瞭なくもり様の外観の度合い。単位は%で表す。

<論文名>

"Elongational crystallization of isotactic polypropylene forms nano-oriented crystals with ultra high performance"
(アイソタクチックポリプロピレンの伸長結晶化が、超高性能を示すナノ配向結晶体を生成した)

<お問い合わせ先>

<研究に関すること>

彦坂 正道(ヒコサカ マサミチ)
広島大学 大学院総合科学研究科 特任教授
〒739-8521 広島県東広島市鏡山1丁目7-1
Tel:082-493-8818 Fax:082-493-8819(JST 彦坂プロジェクト)
E-mail:

<JSTの事業に関すること>

渡辺 信彦(ワタナベ ノブヒコ)
科学技術振興機構 JST イノベーションプラザ広島
〒739-0046 広島県東広島市鏡山3丁目10-23
Tel:082-493-8235 Fax:082-493-8236
E-mail:

This page updated on Apr. 19, 2010

Covering the China earthquake :CNN




Added On April 21, 2010
CNN's John Vause details his journey to the epicenter of the earthquake that struck northwest China last week.

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