自然に学ぶ"森里海連環学"
山陰中央新報連載 自然に学ぶ"森里海連環学" No.9
「生物多様性年」 一からやりなおす
「生物多様性条約第10回締結国会議」が10月18日から名古屋市で開催され、日本が議長国を務める今年は、おそらく各新聞社でも年頭から"生物多様性"という言葉を使う紙面が増えるだろう。
「生物多様性条約」は、1992年にブラジルのリオデジャネイロで行われた「国連環境開発会議(地球サミット)」で、「国連気候変動枠組み条約」とともに採択され、168カ国が署名したもの。条約は93年に発効し、現在は191の国と地域が参加している。
私はその92年のリオデジャネイロに、川の非政府組織(NGO)として参加し、現地でシンポジウムを組み立てた経験を持っている。
日本ではほとんどの国民が知らないので残念なのだが、2007年にわが国の農水省は、「農林水産省生物多様性戦略のポイント」というものをひっそりと(国民にほとんど知られていないのだから、私にこういう風に書かれても仕方ない)発表している。書かれていることは、素晴らしすぎて信じられないほど、まともなこと。いわく。
「農林水産業は、人間の共存に必要な食料や生活物資などを供給する不可欠な活動であるとともに、多くの生き物にとって、貴重な生息・生育環境の提供、特有の生態系の形成・維持など生物多様性に貢献」、「しかし、不適切な農薬・肥料の使用、経済性や効率を優先した農地・水路の整備、埋め立て等による藻場・干潟の減少など一部の農林水産業の活動が生物多様性に負の影響」と。
驚くべきことに、そこに添えられている写真はなんと、諫早水門の閉じられている姿なのだ。
戦後アメリカから移入した農薬を使う指導を農協に続けさせてきた農林水産省が、農薬の弊害を初めて"負の遺産"と認め、干潟などの埋め立てが生物の多様性を損ね、生存に必要な食料の獲得にとっては、かえってマイナスでもあったと認めているのだ。
どうして、こんなことを、わが国は大声で言わないのだろう。また新聞諸紙も、それを今まで報道しなかったのだろう。
この国には、「一からのやりなおし」がどうも必要な気がする。
森と川と海との"つらなり"や"つながり"を問う「森里海連環学」が、今年こそ、そしてこれからこそ、必要な年になったと強く認識している。
コメント (3)
「二木啓考:検察の狙いはズバリ〝小沢の脱税逮捕〟」をクリックするとこの天野礼子氏のサイトが表示されるがどういうことか?
驚くべきことに、そこに添えられている写真はなんと、諫早水門の閉じられている姿なのだ。
一方で、ダムや区画整理や埋め立て等で自然を変え、一方でそれを見直しているという矛盾を生んでいると私は感じています。
それでも、まだ見直しは必要です。
農林水産業は、環境問題とも大きく関わっています。
環境省との連携も必要です。
農林水産業の新たな部門開拓には、経済産業省との連携も必要ですし、食育と言う面では、文部科学省など、このほかにも他の省庁との連携が必要です。
それが、この政権に求められているのだと私は思っています。