2009年7月14日火曜日

【太陽光;レザー装置を利用して、海水淡水化の実現をめざす研究】の紹介

【太陽光;レザー装置を利用して、海水淡水化の実現をめざす研究】
  【出展リンク】 http://wiredvision.jp/blog/yamaji/

          山路達也の「エコ技術研究者に訊く」           

世界は、石油文明からマグネシウム文明へ【 1/3 ~ 3/3 】

【出展引用リンク】

   1/3 :http://wiredvision.jp/blog/yamaji/200907/200907031401.html

   2/3 :http://wiredvision.jp/blog/yamaji/200907/200907031402.html

   3/3 :http://wiredvision.jp/blog/yamaji/200907/200907031403.html


【1/3】以下の通り

 化石燃料の枯渇が迫っているが、自然エネルギーだけで今の世界経済を支えることはできない。理想のエネルギーと言われる核融合への道もまだ遠い……。だが今、エネルギーや資源の問題を一挙に解決するかもしれない研究が進んでいる。その鍵はマグネシウム。海水に無尽蔵に含まれるマグネシウムを取り出し、エネルギー源として利用。生じた酸化マグネシウムは、太陽光レーザーを使ってマグネシウムに精錬する。この壮大な計画に取り組むのが、東京工業大学の矢部孝教授である。
マグネシウムを燃やして、エネルギー源にする

 金属マグネシウムは、携帯電話を始めとする電子機器や飛行機、自動車などで広く使われる。
──次世代エネルギーとして、マグネシウムを用いる研究を進めているとお聞きしました。マグネシウムがよく燃えるのは知られていますが、なぜ今までエネルギー源として使われてこなかったのでしょうか?

 ほとんどの金属は粉末にすればよく燃えて、燃料として使うことができます。昔から、金属燃料エンジンの研究はどの自動車会社もやってきていますし、実際にマグネシウムを配合したロケット燃料も作られています。

 では、なぜマグネシウムが一般的なエネルギー源として使われていないかといえば、マグネシウムを作るのに莫大なエネルギーをかけなければならないからです。触媒を使う今までの技術だと、マグネシウム1トンを作るために石炭が10トンも必要になります。石炭の発熱量が30MJ/kg、マグネシウムは25.5MJ/kgとほぼ同じ。これでは誰もマグネシウムをエネルギー源に使うはずがありません。

 それならば、自然エネルギー、例えば太陽光を集める太陽炉を使って酸化マグネシウムや塩化マグネシウムからマグネシウムを直接精錬してはどうかということになるわけですが、これも困難でした。酸化マグネシウムからマグネシウムを精錬するには2万℃という超高温に相当するエネルギーが必要で、仮に太陽光を集めてそれだけの温度にできたとしても、炉が耐えられません。製鉄炉の耐熱温度が千数百℃ですから。

 マグネシウムをエネルギー源にできるなど、誰も考えていなかったのです。

太陽光を直接レーザーに変換する「太陽光励起レーザー」
──それなのに、なぜマグネシウムをエネルギー源にできると思われたのですか?

 きっかけになったのは、7年前です。私は30年以上レーザー核融合を研究しているのですが、それを応用して、飛行機を飛ばす実験を行いました。

──レーザー核融合と飛行機にどういう関係があるのでしょうか?

 レーザー核融合では、レーザーを使って数千万度の超高温を作り出します。レーザーがすごいのは、時間的にも空間的にもエネルギーを集中できるということ。つまり、少ないエネルギーであっても、一瞬だけ一点に集中させることで、大きな効果を得ることができるのです。私たちは、長さ5cmくらいの小さな模型飛行機に水タンクを載せ、外からレーザーを照射しました。水は一瞬で水蒸気に変わって飛行機の後方へ吹き出し、その反作用で飛行機が進みます。つまり、水蒸気ロケットができたということになります。この実験で使用したレーザーの出力はたったの5W。5Wなんて懐中電灯並みですが、レーザーにすれば模型飛行機を飛ばすこともできるのです。

 では、人が乗れるような飛行機を飛ばすには、どれだけの出力を持ったレーザーがあればよいのか。計算してみたところ、1GW(1ギガワット=100万キロワット)という答えが出ました。これは大規模発電所の出力に相当しますから、こんなレーザーを電気で作ることはできません。

 どうしたらよいかと考えた時に思い当たったのが、太陽光をそのままレーザーに変換する、太陽光励起レーザーです。1995年、我々のグループの一人、吉田國雄特任教授がクロムとネオジムからレーザー媒質を開発していました。日本のある会社はこれをさらに改良し、2005年には効率が42%のレーザー媒質を作ることに成功しました。太陽光をこのレーザー媒質に当てると、レーザー光線が出ます。



 矢部研究室が用いているレーザー媒質。これに太陽光を当てると、レーザーに変換される。

──このレーザー媒質は大量生産できるのですか?

 クロムとネオジムを混ぜて焼き固めるだけですから、大量生産するのは簡単です。

 ただ、レーザーで飛行機を飛ばすといっても、そんな実験にはどこもお金を出してくれないので、別の応用を考えました。それが次世代エネルギー、レーザーによる酸化マグネシウムの還元だったのです。もっとも、今ではこちらが本命になってしまいましたが(笑)。

(1/3 )以上

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【1/3 】以上
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【2/3】以下の通り

海水中には無尽蔵のマグネシウムが含まれている
──マグネシウムを燃やしてエネルギーを生み出し、できた酸化マグネシウムは太陽光励起レーザーで還元して、またマグネシウムに戻すわけですね。しかし、リサイクルを綿密にやったとしても、エネルギー源になるほどの量があるのでしょうか?

この地球上には、マグネシウムが無尽蔵といってよいほどあります。海水中には石油30万年分に匹敵するマグネシウムが含まれています。

──ですが、海水からマグネシウムを取り出すにもエネルギーが必要になるでしょう?

 そう思うでしょう(笑)。ここにもう1つのポイント「淡水化」があります。

 2025年には、30億人分の淡水が不足すると言われています。最も広く使われている逆浸透膜方式で30億人分の淡水を作ったとすると、現在世界で使われている電気の半分が必要になります。

 そこで、太陽光を使った淡水化装置を作り、特許を取りました。私たちは「エレクトラ」というベンチャー企業を興し、この装置を海外に販売しています。現在、アジアの二カ国から国家レベルの発注が来ています。

──太陽光を使って淡水化するということは、光を集めて水を蒸発させるということですか?

そういうことです。しかし、単純に熱を加えて蒸発させようとすると大量のエネルギーを消費します。

みんな、水は100℃にならないと蒸発しないと思っていますが、私たちが汗をかいたら自然に乾きますね。洗濯物も自然に乾きます。

──湿度が関係しているのですか?

はい。湿度のバランスをうまく調整することで、エネルギーをほとんど使うことなく淡水を作ることができます。

 現在の逆浸透膜方式は、装置コストを1とすると、20年使った場合のランニングコストは20。

 これに対して、私たちの装置は装置自体のコストも1桁安いですし、エネルギーもほとんど必要としません。スピードも速く、1台当たり1日10トンの淡水を作れます。2Lのペットボトルなら5000本分です。

──あとには、塩やその他の物質が残るというわけですね。マグネシウムはどう取り出すのでしょう?

 淡水を取ったら、あとには塩(塩化ナトリウム)と、にがり(塩化マグネシウム)が残ります。塩とにがりを分離するのは、エネルギーが不要な昔ながらの方法を使います。

 塩化ナトリウムと塩化マグネシウムの混合物に、上から少し水を掛けると、ぽたぽたと液体がしたたってくるのですが、これがほとんど塩化マグネシウムなのです。塩化マグネシウムは塩化ナトリウムより水に溶けやすく、この性質を利用するだけで簡単に塩化マグネシウムだけを取り出せます。



 マグネシウム循環社会のイメージ。海水や砂漠の砂に含まれるマグネシウムを取り出してエネルギー源として利用。太陽光励起レーザーでふたたびマグネシウムに戻す。

 マグネシウムがエネルギー源になると、世の中はどう変わる?
──あとは、太陽光励起レーザーで塩化マグネシウムをマグネシウムに精錬するというわけですね。それでは、マグネシウムは世の中でどう使われるのでしょうか?

 まず、火力発電所です。現在の火力発電所では、石油や石炭で湯を沸かし、その蒸気でタービンを回して発電しています。マグネシウムの場合、水と反応させることで水素が発生し、この水素を燃やせば高温高圧の水蒸気が発生します。これでタービンを回して発電すればよいのです。これまでの火力発電所の設備は、タービンも含めてほとんどそのまま流用できます。発生した水素と酸素を反応させれば水になりますから、二酸化炭素も出ません。

 自動車用の燃料電池も研究が進んでいます。例えば、米国のベンチャー企業は亜鉛燃料電池で動く自動車を2003年に開発しました。この自動車は百数十kg弱の亜鉛を積み、走行距離は600kmです。マグネシウムなら亜鉛に比べて3倍のエネルギー密度がありますから、10kgあれば200kmは走れるでしょう。燃料となるマグネシウムは、コンビニで売ることを想定しています。爆発もしませんし、少々水がかかっても大丈夫です。マグネシウムの価格は現在kg当たり300〜400円ですが、太陽光励起レーザーによる精錬で価格が下がれば、マグネシウム燃料電池自動車以外はすべて消えることになるでしょう。

──マグネシウム燃料電池も水と反応させるのですか?

 火力発電の場合は水と反応させますが、燃料電池の場合は酸素と反応させます。酸素と反応させると水素が発生しないため、安全だからです。水素は軽いために自動車のどこかに貯まる可能性があり、引火すると爆発してしまいます。また、燃料電池の電極に水素が付くと、電極の性能が著しく低下します。現在の燃料電池は、高価な白金で水素を吸着しようとしていますが、それくらいなら最初から水素が発生しない反応を使えばよいのです。

 マグネシウム燃料電池の技術的課題はほとんど解決されており、今は燃料待ちの段階。マグネシウムの価格が安くなれば一挙に実用化が進むでしょう。燃料電池を使って生じた酸化マグネシウムは、やはり太陽光励起レーザーを使ってマグネシウムに精錬できます。

 400Wの太陽光励起レーザーを今年中に実現


 80Wの太陽光励起レーザーなら、ステンレス板に一瞬で穴を開けることができる。



 読書用ルーペなどにも用いられるプラスチック製フレネルレンズ。東工大のレーザー発生装置には、4㎡のフレネルレンズが使われている。
──太陽光励起レーザーを使って、いかに低コストでマグネシウムを精錬できるかにかかっているのですね。

 2007年に北海道の千歳にレーザーの実験施設を作り、実験を重ねてきました。現在4㎡のレンズで集めた太陽光をレーザー媒質に当て、80Wのレーザーを出力できています。80Wのレーザーでもステンレス板に一瞬で穴を開けるほどの威力があります。しかし、4㎡に当たる太陽光は4kWですから、80Wというのは2%の変換効率でしかなく、このままでは商用化できません。目標の出力は400Wですが、すでに目処はついており、今年中には達成できるはずです。

──5倍の出力アップをそんなに簡単に実現できるものなのですか?

まず、レーザー媒質に混ぜるクロムの割合を増やします。理論的には、これだけで変換効率を3倍にできます。

 また、太陽光励起レーザーではこういうプラスチックレンズを使っているのですが、この設計を改良します。

──えっ、こんなプラスチックレンズなんですか?

 はい、これのサイズを大きくしたものを使っています。金型でどんどん作れますから、大量生産すれば製造コストはタダみたいなものですよ。

 ただし、現在のレンズは気泡が混じっていたりして、太陽光を半分くらいしか集められていません。金型を作り直してレンズの精度を上げれば、太陽光の透過率は2倍にはなるでしょう。

 レーザー媒質とレンズの改良を合わせれば、5倍の出力アップはそれほど難しくないと考えています。
【 2/3 】以上

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【3/3】以下の通り
3/3

 太陽光励起レーザーの発生装置は1台50万円


 東工大の屋上で実験中のレーザー発生装置。上部のフレネルレンズで集めた太陽光を、中心部にあるレーザー媒質に当てる。
──酸化マグネシウムからマグネシウムを精錬するには2万℃の超高温が必要になるとおっしゃっていました。 これに耐えられる炉は実現できるのでしょうか?

 そこでレーザーの長所が発揮されます。レーザーなら、1mmのスポットだけ2万℃にするということが可能です。その周辺はすぐに冷えますから、炉全体が2万℃に耐える必要はありません。

──細いレーザー1本では、大量の精錬が難しいのでは?

 だからこそ、太陽光励起レーザーの装置をたくさん作るのです。何百台という装置を並べてレーザーを作り、各装置から光ファイバーで精錬所に伝えます。酸化マグネシウムにレーザーが当たると、0コンマ数秒でマグネシウムを精錬できます。

──レーザーの発生装置は高価になりませんか?

 現在東工大の屋上で実験装置を稼働させており、太陽の位置を自動追尾して最適な出力を得ることができます。水道用のパイプなどを利用して組み立てたら、1基当たり50万円ほどで制作できました。

──太陽光がいつもあるところでないと、精錬はできませんね。

 アリゾナやモンゴルの砂漠など、1年中雲のない地域は世界中どこにでもあります。こういう地域でマグネシウムを精錬して、日本に持ってくればよいでしょう。

 淡水化事業からスタートし、マグネシウム循環社会へ──マグネシウムの循環社会は、どういうステップを経て実現すると考えていますか?

 まずは、海水を淡水化する事業で利益を上げます。先に述べたとおり、すでに海外から淡水化装置の発注が来ており、この事業だけでも十分に利益を出せます。今後、世界の淡水ビジネスは年間150兆円規模になると言われています。

 次は、マグネシウムの精錬ですが、最初はエネルギー源としてではなく、資源としてマグネシウムを売ればよいでしょう。携帯電話のボディなど、マグネシウムの需要はいくらでもあります。マグネシウムは今1kg当たり400円と高価ですからここでも利益を得られ、そうすれば太陽光励起レーザーの装置をもっとたくさん作れるようになります。ちなみに、マグネシウムに限らず、鉄やアルミ、シリコンも、レーザーを使って同様に精錬可能です。金属産業の構造を根本的に変えてしまう可能性もあると思っています。

 そうして十分にマグネシウムの値段を下げられるようになったら、エネルギー源として、発電所や家庭、自動車に使えばよいでしょう。燃料として使った後にできる酸化マグネシウムは、太陽光励起レーザーで精錬してマグネシウムに戻します。

──これからのロードマップはどうなっていますか?

 ある外国の企業が200億円出資してくれることになり、この資金を使って今年中には沖縄の宮古島に実験施設を作ります。この施設では、海水の淡水化からレーザーによるマグネシウムの精錬まで全サイクルの実験を行います。投資を得られたので、政府からの補助金も必要なくなりました。

 マグネシウム循環社会は、2025年に実現する
──エネルギー生産から、産業利用、リサイクルまで、1つの街で完結するんですね!

 はい。宮古島の施設が成功したら、東南アジアの各所に同じような施設を作り、もっと大規模な実験を行う予定です。


 うまく行けば、2025年頃にはマグネシウムをエネルギー源とした社会を実現できるのではないでしょうか。みなさんが考えるより、早いペースで進むと思っています。

──少し前には、水素社会という言葉がもてはやされました。マグネシウムではなく、水素をエネルギー源にしてもよいのではないでしょうか?

 水素は、保管場所が問題になります。700気圧で保管すれば場所を取らないという人がいますが、700気圧に耐えられるタンクはごくごく小さいものしか作れず、結局は1気圧で保管するしかありません。日本が必要とするエネルギーをすべて水素にしたとすれば、日本中の地下が水素タンクになるでしょう。

──マグネシウム循環社会の実現可能性をどう見ていますか?

 私は30年間レーザー核融合の研究をしてきました。レーザーを出す、金属を溶かして反応させる、そうした研究はマグネシウムの精錬や淡水化にすべて活かされています。そして、吉田國雄特任教授によるレーザー媒質。こうした要素が今この時期にすべて合わさったのはとても不思議で、自分はこれをやるために生まれてきたのではないだろうかという気すらします。実験を繰り返して実証データも蓄積されており、実現には絶対的な自信がありますよ。



 研究者プロフィール

 矢部 孝(やべ たかし)

 現職は、東京工業大学・大学院理工学研究科・教授。1973年、東京工業大学工学部を卒業後、同大学助手に就任。その後、1981年に大阪大学・レーザー核融合研究センター講師、85年に同助教授、1995年には東京工業大学・教授となり現在に至る。また大学発ベンチャー「株式会社エレクトラ」の代表取締役も兼任。1999年の英国王立研究所200周年記念招待講演を行うなど、数多くの賞を受賞。現在、国際数値流体学会の名誉フェロー、計算力学国際連合の理事など。


【 3/3 】以上

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------- ------- ----- 以上出展引用終わり -----
【参考リンク1】海水淡水化;逆浸透膜 (wikipedia) :

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%80%86%E6%B5%B8%E9%80%8F%E8%86%9C

【参考リンク2】20年後に生き残る水資源開発を

      http://www.spc.jst.go.jp/hottopics/0907water/r0907_yabe.html 

【参考リンク2】引用開始以下の通り。

矢部 孝(東京工業大学教授、株式会社エレクトラ 代表取締役) 2009年6月5日

 我々は、株式会社エレクトラを東京工業大学の大学発ベンチャー第38号として2007年1月に設立した。現在の主な事業内容は、太陽光励起レーザーの開発、レーザーによるマグネシウム還元技術の確立、太陽光エネルギーを利用した淡水化装置の開発である。将来的にはこれらの技術が弊社の提案する再生可能エネルギーサイクル、マグネシウム社会の基幹技術として一つのサイクルを形成することになる(図1参照。参考文献 日経サイエンス2007年11月号)。これらエレクトラで開発を行っている技術のうち、本稿では、我々が開発し実用化が間近な淡水化装置について説明する。


図1マグネシウムと太陽光励起レーザーを用いたエネルギー循環システム

 水不足の問題は、人類にとって早急に解決しなければならない問題である。2025年には30億人分の水が不足すると報告されている。この30億人分の水というのは計算すると年間1.5兆トン(1日当り41億トン)となる。よってこの水不足問題の解決には、20万トン/日の淡水化プラントを20年以内という時間の制約の中で、2万基新設する必要があるということである。また仮にこのクラスの淡水化プラントが2025年までに完成したとしても、このプラントを稼働させるためには当然エネルギーが必要となる。しかし消費電力が少ないと言われている逆浸透膜淡水化プラントでさえ60気圧の圧力で駆動する必要があるため、20万トン/日クラスのプラントを稼働させるためには、多大な電力が必要となる。30億人分の水不足を解消するため、2万基の逆浸透膜淡水化プラントを稼働させると使用電力は年間9兆kW時となる。これは2002年の世界電力使用量16兆kW時の56%に相当する莫大な電力量である。

 比較的低消費電力で稼働するといわれる逆浸透膜法淡水化装置でさえこのような状況なので、現存する淡水化装置で将来の水不足問題を解決するというのは現実的ではないように思われる。水不足問題の解決のためには、建設が容易かつ低消費エネルギーで稼働可能な全く新しい淡水化装置が必要となる。

 さらには、逆浸透膜法にはいくつかの大きな欠点がある。その1つは海水中のホウ素が除去できないことである。WHOの基準では、1リットルの飲料水中のホウ素の量を0.4mg以下と定めている。これ以上では、人間の生殖能力に影響が出るからである。しかし、最新の逆浸透膜でさえ、まだ、1-3mg残存している。

 意外な問題もある。淡水装置の性能が良すぎると塩などが取れすぎて、この塩害をどうするかということも中東では問題となってきている。我々は、こうした淡水装置から出てくる塩やその他の資源を有効に利用するためのプロジェクトにも取り組んでいる。その1つが、この残存物から得られるマグネシウムの有効利用である。このマグネシウムは、太陽から直接作られた太陽光励起レーザーによって精製され、石炭の代わりとなって発電所の燃料や自動車の電池に使われる。この点については、多くの新聞や上述の日経サイエンスで紹介されているので、ここでは省略する。

 それでも結局最も大きな問題は、淡水装置を駆動する電気であることの例をここに紹介しよう。2007年5月25日のAP通信で報じられたドバイの新型淡水装置建設計画である。日産270万トンの淡水装置に対して、必要発電設備900万キロワットということである。これは、大型火力発電所9基分である。2050年までに、CO2排出を半減させようというが、後、20年後に50%のCO2排出増がありうる、淡水化装置を受け入れることはできないであろう。

 将来は、我々が提案するマグネシウム燃焼によって駆動される淡水化装置がその役割を担うであろうが、その前に、今ある技術で緊急な対策が必要である。この解決に有望なものは、太陽などの自然エネルギーを利用した淡水装置であるが、現在提案されている装置は逆浸透膜と蒸発式の混合であったり、真空を利用した蒸発方式であったりと、電気で駆動されている逆浸透膜装置の10倍以上の価格となっている。最も、逆浸透膜が20年間で使用する電力を非石油生産国の電気代で計算すると、逆浸透膜装置の10倍の価格となるので、どちらも同じといえば同じであるが。

 この問題解決のため、我々は太陽熱を利用する低消費電力かつ安価な淡水化装置を開発した。この淡水化装置は、逆浸透膜法のように高圧の状態を作り出す必要は無く、常圧で淡水を製造することが可能である。また装置を多段化し、排水による熱ロスを少なくする工夫により、低消費電力で稼働する淡水化装置となっている。

 本装置は、太陽エネルギーを利用する装置でありながら、太陽のない夜間を含め24時間運転することができ、現在、日産10トンクラスの装置の試験を行っている。今後の予定では、宮古島との協力により、2009年8月には、日産600トンのテスト装置を稼動させる予定であり、そのテストプラントと同時にある地域での実用装置を建設してゆくための予算が確保されている。現状では、世界中に早く技術を広めるために、太陽光を利用しているが、近い将来は、我々が開発した太陽光励起レーザーによって還元されるマグネシウムを石炭の代わりとする燃焼熱で淡水化が可能となるであろう。

 我々が開発中の淡水化装置は、低消費エネルギー、低コストの装置となるが、淡水化装置自体にはなんら難しい技術は必要としておらず、いわゆるローテクの塊である。新しいのはその発想である。東京工業大学の矢部研究室ではこのようなこれまでにない発想に基づく技術がたくさん存在する。しかしこれらは未だ一般的にはなじみのないものがほとんどである。そこでこれらの技術を世に広めるため、ベンチャー企業を設立することになった。これが株式会社エレクトラを立ち上げたきっかけである

 エレクトラの究極の目標はマグネシウムによる循環型社会の構築である。しかし、この目標に対して外部資金を導入するのは不可能であると考えた。我々も何度も国のプロジェクトに応募したが、すべて落選している。その理由は、「太陽電池で水を分解し、水素を作り燃料電池を使えば、もっと簡単で有望である」ということだった。しかし、水素はエネルギー密度が低すぎるので、貯蔵には向かない。100万キロワットの発電所のわずか一日分でも、1km四方で高さ10mのタンクが必要である。高圧で大型のタンクが作れないからである。これは、自動車にも言える。確かに700気圧の小さな自動車用タンクは作れるかもしれないが、それに注入するために、全国に水素タンクを作るとどれくらい大きなタンクが必要かを考えた人がいない。メタンやメタノールを改質して水素を作るという案もあるが、そのときにCO2が発生するとは誰も言わない。

 こうした無理解な審査員を相手にいくら頑張っても意味がないということで、すべて自己資金でプロジェクトを進めることを決断した。これがエレクトラを設立した理由である。その資金で2007年7月に千歳に太陽光励起レーザー施設を建設し、現在、世界最高の効率を実現し、太陽光励起レーザーによってステンレス板を切断できるまでとなっている。資金さえあれば、一年以内に、必要なレーザー性能を達成できるであろう。しかし、これだけでマグネシウム社会を構築するまでの資金を確保することは困難なので、まずは、短期間で収入を上げる道を模索したのである。そこで生まれたのが、新型淡水化装置である。これを呼び水にして投資家の外部資金を獲得することに成功し、宮古島プロジェクトが始まろうとしている。


図2 千歳市に建設された4m2レーザー。一基あたり1kWのレーザー出力を目指す


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PROFILE

矢部孝(やべたかし):東京工業大学教授、株式会社エレクトラ代表取締役。

 1950年1月生まれ、1972年東京工業大学工学部卒業、1972年東京工業大学助手、1981年大阪大学講師、その後助教授を経て、1995年より東京工業大学教授、1980年東京工業大学 工学博士(論文博士)。

 大阪大学でレーザー核融合研究に従事し、その時代に考案した計算手法CIP法は世界中に広まり、参照数1200を超えている。この業績により1999年には、英国王立研究所設立200周年記念講演を行った。

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【以上引用終わり】

【参考リンク】:マグネシウム:wikipedia :

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%B0%E3%83%8D%E3%82%B7%E3%82%A6%E3%83%A0

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