2009年11月5日木曜日

【シロアリとパンダで、一石二鳥の生ゴミ処理を実現】:山路達也の「エコ技術研究者に訊く」

【シロアリとパンダで、一石二鳥の生ゴミ処理を実現】:山路達也の「エコ技術研究者に訊く」
       
                           2009年10月30日
    


【出展引用リンク1】: 山路達也の「エコ技術研究者に訊く」

    http://wiredvision.jp/blog/yamaji/


【出展引用リンク1-1】:  

1-1.: http://wiredvision.jp/blog/yamaji/200910/200910301631.html

【出展引用リンク1-2】:

1-2.: http://wiredvision.jp/blog/yamaji/200910/200910301632.html

【出展引用リンク1-3】:

1-3.: http://wiredvision.jp/blog/yamaji/200910/200910301633.html

【出展引用リンク1-4】:

1-4.: http://wiredvision.jp/blog/yamaji/200910/200910301634.html


【引用始め】以下の通り
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1-1

パロディ版のノーベル賞と言われる「イグ・ノーベル賞」。2009年は、北里大学名誉教授の田口文章博士が生物学賞を受賞している。冗談のような研究が目立つイグ・ノーベル賞だが、研究自体はまじめなものも少なくない。田口博士の研究は、シロアリやパンダ由来の細菌を使って、水素発生と生ゴミ処理を行うというもの。なぜシロアリ、そしてパンダなのか?




リチャード・ロバーツ博士(1993年、ノーベル生理学・医学賞受賞)と握手する田口博士(写真提供:田口文章)。



ノーベル賞受賞者も参加して作り上げる「イグ・ノーベル賞」授賞式

──イグノーベル賞、受賞おめでとうございます。授賞式はいかがでしたか?
イグノーベル賞なんてものがあることを僕は全然知らなくて。4月頃、イグノーベル賞の委員会から僕がノミネートされているという旨のメールが来て驚きました。メールには受賞したら、それを"accept"してくれるかと書いてある。しかも授賞式への交通費は自腹、宿は関係者の自宅ということで、女房は怪しいからやめておいた方がいいんじゃないかと心配していました(笑)。

授賞式の印象は、陽気なヤンキーたちが企画したエンターテインメント。ハーバード大学のサンダーズ・シアターで2時間に渡って、多数のノーベル賞受賞者を巻き込んだ、オペラあり冗談ありのショーが展開されるのです。式の前には、主催者側から60秒間の短いスピーチをしてくれと頼まれました。その前半は研究内容を一般人にもわかるように面白おかしく、後半は考えさせられる内容にしてくれという、難しい注文を付けてくる。式が始まって、本物のノーベル賞の受賞者が副賞を手渡してくれるのだけど、この人は延々と握手をして、挨拶のカウントが始まってもなかなか離してくれません。慌てて自分のスピーチを始めるのだけど、最初に時間を取られてしまったからどうしても60秒を過ぎてしまう。すると、舞台の袖から小さな女の子が出てきて、「お願いだからやめて」と甲高い声で懇願してくるんですね。サンリオのパンダのキャラクター文具をあげたのだけど、それでも黙ってくれないから、最後には僕も根負けしてしまいました。授賞式が終わった翌日には、隣にあるMITで研究内容を今度こそちゃんと講演することになります。
交通費が自腹だというのはまあなんですが、面白い経験をさせてもらいました。訳がわからなかったけれど、行ってみてよかったですよ。



1-2 

メタンの代わりに水素が出た

──博士の研究は真面目なものですが、やはり「パンダの糞」を使うという点が、イグ・ノーベル賞主催者の琴線に触れたんでしょうね。どうして、このような研究をされることになったのでしょう?

僕は元々ウイルス学を専門としており、ガンの原因となるウイルスについては世界に先駆けて研究してきたという自負があります。それが20年ほど前、ひょんなことから、環境分野の研究もまかされることになりました。その時に、建設系の大手企業がメタン発酵について研究してくれないかと依頼してきたのです。バイオマスからメタンガスを効率よく発生させ、発電などに利用しようというもくろみだったようです。ちょうど研究室にいた学生もメタン発酵に興味を示したこともあって、じゃあ試しにやってみようかと。

ところがちょっと調べてみると、メタン発酵というのは簡単なようでなかなか難しいことがわかってきました。ドブから自然にメタンガスが沸いてくるのはよく見られる光景ですが、こういうシステムを実験的に作るのは細菌の専門家にとっても困難で、100年近くもメタン発酵の研究は完成寸前で停滞したままだったのです。

──最初は、メタンガスを発生させる仕組みを作ることが目標だったのですね。

そうです。5人ほどの研究チームを作って取り組んだのですが、最初の1年間は泡の一粒も出ませんでした。最初使っていたのは標準サイズのフラスコでしたが、サイズが小さいのが問題かもしれないと考え、2年目からは30Lの特大フラスコを使うことにしました。

2年目のある日、学生の一人が「泡が出ました!」と言いながら駆け込んできました。フラスコの中を見てみると、細かい泡が何本も数珠のように連なって発生しているではありませんか。炭酸ガスでないことはすぐわかりました。二酸化炭素はすぐに水に溶けてしまいますから。

ようやくメタンが出たのかと思い、発生した気体を採取して火を付けてみることにしました。窒素ガスであれば燃えないはず、燃えれば気体のおおよその性質がわかります。

メタンなら黄色い炎がチロチロと燃えるのですが、この気体に火を付けると、腰を抜かすような大きな音を出して爆発しました。驚きましたね。気体は水素だったのです。

──メタンガスは発生しなかったのですか?

企業から依頼のあったメタン発酵については3年間研究しましたが、うまく行きませんでした。しかし、バイオマスから水素を発生させるのは有望そうだと、途中から並行してこちらも研究を進めることにしました。

ある時、Natureだったかに掲載されていた短い論文が目に留まりました。土壌科学の研究者が書いたもので、熱帯雨林上空の空気は組成が他の地域と異なるというのです。通常は存在しない気体、例えば水素やメタンなども多く含まれていると書かれていました。

なぜ、熱帯雨林の上空には水素が多いのだろう。ふと思いついたのが、シロアリです。熱帯には数多くのシロアリが生息しています。シロアリが枯れた樹木を食べて、水素のように軽い気体を発生させているのではないだろうか?



1-3

シロアリ由来の細菌が水素を発生させる

──シロアリがよく水素と結びつきましたね!

結果から言えば、この推測は当たりでした。

僕の教え子が勤めている消毒管系の会社が、商品開発のためにシロアリを飼っているというので、バケツ1杯くらいの巣を提供してもらうことにしました。ところで、シロアリの捕まえ方を知っていますか?

──ピンセットでつまむのではないのですか?

僕も最初はそうやってみたのですが、ピンセットでつかみ損ねるとシロアリはみんなさっと隠れてしまうのです。うまくつかめても、潰れてしまいますしね。

教え子に教えてもらったのですが、絵筆でシロアリをつつけばいいんです。つつかれたシロアリは怒って毛に噛みつきますから、面白いように採れますよ。

さて次に、採取したシロアリから水素を発生させる細菌を分離しようとしました。ところが細菌を培養しようとしてもカビが生えてうまくいきません。改めてシロアリを観察してみると、口内に光るものがある。採取してみると、蟻酸(ぎさん)です。シロアリの体内にいる細菌は、蟻酸への耐性があるのではないか。試しに、培地に蟻酸を加えてみたところ、カビも生えずうまく細菌のコロニーが育ってきました。

100種類くらいの細菌を採取して、調べてみたところ、90種類くらいは水素を発生させることがわかりました。このうち1/3は硫化水素やアンモニア、要するに臭いガスを発生させるので除き、残りから有用な細菌を探しました。

細菌というのは、非常に嗜好性の強い、つまり好き嫌いの激しい生物です。例えば、3種類食べ物を与えたとしたら、どれから食べるかきっちり順番が決まっています。生ゴミのようにどんなものが含まれているかわからないものを分解するにはいろんなものを同時に食べてくれないと困りますから、役に立つ細菌を選び出すのは苦労しました。

それでも何とか生ゴミを分解して水素を発生できる10種類ほどの嫌気性細菌を分離することができました。細菌の研究というのは、10万株調べて、1つ有用な細菌を取り出せれば万々歳という世界。100株調べて10株が当たりというのは、とてつもない確率です。

──シロアリ由来の細菌を使うと、どれくらい生ゴミを分解して、水素はどれくらい出るものなのでしょう?

分解する量より水素発生にかかる時間を重視して、細菌を選びました。生ゴミを投入してから、だいたい5時間くらいでピークを迎え、10時間くらいで反応が終わります。

発生する水素の量は、1gのブドウ糖に対して600mlというところでした。それまでは1gのブドウ糖当たり200mlというのが普通でしたから、これはかなりの効率でしょう。反応時間もメタン発酵の場合の1/20程度ですみます。

ところが水素が発生したあと、残りカス(残渣)がどうしても出ます。コピー用紙をシュレッダーにかけたゴミの場合、うまくいった時で50%、下手すると30%くらいしか分解できないこともありました。何とか、この残渣を分解できないかと考えたのです。

その時に思いついたのが、パンダでした。



1-4

笹を食べて巨体を維持できるパンダの秘密

──いきなりパンダですか?

ご存じの通り、パンダは笹を食べて生きています。あんなに消化が悪そうな笹を食べているのだから、胃腸には何か特別な細菌がいるのだろうと考えました。

さっそく上野動物園に行ってパンダの糞を見せてもらったのですが、とても糞とは思えない。食べたものがほとんど消化されずに出てきていて、まるでほかの動物のエサのよう。笹など1日40kgのエサを食べて、40kgの糞をするそうです。こんなに消化していないということはロクな細菌がいないのではないかとも思いましたが、実物のパンダを見て考え直しました。パンダはやはり大きくて、これだけの巨体を維持できるのはやはり特別な仕組みがあるとしか考えられません。

大量の糞をもらい、その一部を笹や試薬と共に、家庭用の生ゴミ処理機に掛けてみました。しかし、一向に分解が進まないのです。

普通、細菌が増えない時はビタミンなどのサプリメントを足すわけですが、逆に栄養分を減らしてみるのはどうかと考えました。生物がエネルギーとして利用するのはブドウ糖を始めとする六炭糖ですが、あえてどの生物も利用しない五炭糖のキシルロースを加えてみたのです。そうこうしているうちに、笹が粉のようになって分解されてきました。パンダの腸内細菌だけとは言い切れませんが、少なくともパンダの腸内を通過したものから細菌を採取して、意外なほど簡単に生ゴミを分解できることがわかりました。

生ゴミ処理に使うのであれば、高温でも働き、なおかつ耐熱性の高い酵素を作り出す細菌がほしいところです。そこで、実験装置内の温度を上げて60〜70℃でも増殖する菌を選び出しました。さらにこのうち、70℃でも活性を失わない酵素を作る細菌も見つかりました。こうした細菌を5種類ほど混ぜて生ゴミを分解してみると、残渣がほとんど出ないのです。

生ゴミ処理機に、キャベツや魚の頭などで作った生ゴミを、毎日2kgずつ投入してもほとんど重量が変わりません。一般的な生ゴミ処理機では80%減らせられれば優秀な方ですが、僕たちの見つけた細菌を使えば97%も減らすことができました。残った3%は灰分で、これはさすがに分解できなかったようです。

分解された生ゴミは、二酸化炭素と水になって蒸発したと考えられます。処理機内は80℃くらいまで温度が上がりますから、仮に病原菌がゴミにくっついていても死滅します。

──細菌や酵素は70℃までだったのでは?

それが不思議なのですが、何か別の物質と組み合わさるとか、条件が変わると80℃でも安定するようなのです。なぜ耐熱性が高まるのかは、わかりませんでした。

──研究の現状は、いかがでしょう?

ここまでお話しした研究は、7年前にいったん終了しています。

ただ、パンダ由来の細菌については、今でも問い合わせをいただいていて、今日も台湾の企業から電話がありました。しかし、僕としては、量が少ないにしても水素を発生させるシステムと組み合わせて実現したいと考えています。今は、国も太陽光発電に注力していて、水素関連の研究は後回し。さて、どうしたものかと思案しているところです。

昔、試算したところ、日本中の生ゴミをシロアリ+パンダ由来の細菌を使って処理すれば、100万台の水素燃料電池自動車を150日間稼働させられるという結果が出ました。この数値は、セルロースの加水分解率を20%としての計算で、今後加水分解率が40%に向上できれば、100万台の水素燃料電池車はほぼ1年間も走らせることも可能なのです。もちろん、これは机上の計算ではありますが、バイオマスにはこういう可能性もあるということです。


研究者プロフィール

田口文章(たぐちふみあき)



1937年生まれ。ペンシルベニア大学卒、北里大学大学院医療系研究科教授、パストゥール研究所やローベルト・コッホ研究所などに留学、専門は環境微生物学。2003年に北里大学を定年退職、北里大学名誉教授。『学生時代に何を学ぶべきか』、『私の好きな言葉』、『アルカリ発想のすすめ』など著書多数.「理科好き子供の広場」をウエブ上に展開中.


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【引用終わり】以上の通り

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