2010年02月10日
幕引きされた外交機密費上納問題
時の政権が混迷すると、正義が実現されなくなる。なぜなら、政権が本気で正義を実現しようとすれば大きなエネルギーと覚悟が要るからだ。
そのような状況にない今の民主党政権を憂う。せっかく政権を交代したのに改革が中途半端になれば国民にとって不幸だ。
就任早々、「そんなん、あるんですか」ととぼけて見せた平野官房長官が、ついに外交機密費上納問題の調査を幕引き宣言した。
おりから2月6日の各紙は、神奈川県警の不正経理発覚を報じていた。
あの仙波敏郎元巡査部長の捨て身の告発で明らかになった警察裏金の後も、なお不正が粛々と続けられていたのだ。
天をもおそれないこのような権力者の悪が続くのも、権力者同士の庇い合いがあるからだ。
その構図は政権交代が起こっても変わらない。小沢問題がどのような形で決着しても変わらない。
外交機密費問題に戻って論じよう。
この問題は三つのまったく異なった問題が混在している。
一つは外務省が自ら予算化した機密費を官邸に上納したという問題である。しかし、この問題は技術的な瑣末な話だ。
二つ目には、官邸に上納された官房機密費が、飲み食いや、現金わたしや、旅費負担などの形で、野党対策、メディア対策さらには選挙対策などに使われていたのではないかという問題だ。
これは上納問題とは関係がない。上納前から官房機密費はあった。
そしてその官房機密費がそのような形で使われていたことが明るみになると大問題だ。
しかしそれが明るみになり関係者がすべて罰せられればこの国は崩壊する。だから権力者はそんな事はしない。それを国民も気づいている。世の中はそんなものかとあきらめている。
ところが三番目に、この上納問題の裏に国民がまったく知らされていないことがある。それが外務官僚による官房機密費の不正使用のからくりである。
外務省の機密費不正使用問題は、松尾克俊という一人の会計担当官の犯罪で終わってしまった。
しかし国民が素朴に疑問を抱かなければならないのは、なぜ一人の会計担当官が数億円にも上るといわれる巨額の官房機密費を簡単に不正使用出来たのかということである。
07年2月に発刊された「日本の裏金・上下」(第三書店)という本がある。そこで著者古川利明氏が、官邸に上納された外交機密費は、官房機密費になってマネーロンダリングされたと書いている。
つまり官邸会計担当者の機密費の扱いがあまりにもいい加減なため、外務省がそれに目をつけて官房機密費を自由に使った疑惑があると書いている。
2月9日の朝日新聞は「外交機密費」晴れぬ闇、という見出しで機密費上納問題を書いていた。その中で田中真紀子元外相の次のような言葉が紹介されていた。
・・・手をつけようとしたが外務官僚は「政治家は知る必要はない」という対応でとりつく島もなかった。小泉首相も福田官房長も一切協力しなかった・・・
この政府と外務省の不明な関係は、民主党政権の平野官房長、岡田外相にも見事に引き継がれたわけだ。
政権が変わっても権力者のもたれあいが続けば正義は決して実現しない。
機密費調査幕引きの本当の問題はここにある。
民主党政権の混迷が続けば国民は不幸になる。それを喜ぶ者は多数いる。
完
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